「キッチンカーって便利なだけじゃなくて、大げさに言えば夢がある」
——キッチンカーも導入予定! 和食出身料理人・小田切博

ジャーマンスタイルのビールが看板のひとつであるROCK。料理もドイツを中心に、欧米系のメニューが多いです。

ですが、一方でキッチンで働く料理人はいろんな経歴の人がおり、彼らの経験を活かしたアジアンや和食などちょっと意外なメニューも登場することがあります。

そんなキッチンを支えるスタッフのひとりが小田切博。実は和食出身のスタッフで、普段のメニューはもちろん、スポットメニューで登場した親子丼など和の料理を出すきっかけにもなった人物です。さらに、この夏登場予定のROCKのキッチンカーのプロジェクトも進めています。

今回はそんな小田切博に話を聞きました。

フグもさばける和食出身料理人

——小田切さんってかなりお若く見えるんですけど、おいくつなんですか?

(笑)。今年41歳になります。

小田切博。

——20代って言われたら20代にも見えます(笑)。

20代後半から30代前半くらいってよく言われます(笑)。

——今までずっと料理をやってきたんですか?

そうですね。両親も昔(山梨県北杜市の)長坂でお店をやってたんです。今はお店は閉じて、ROCKで働いています。

——この間の「ROCK Re:birthday」でも焼きそばを焼いてましたよね。

そうです。あれが父です。

——小田切さん自身は昔から料理の道に進もうと思ってたんですか?

いや、小さいころは全然そんなこと考えてなかったです。高校を卒業するときに、大学に行くか、就職するか、専門学校に行くかと考えて、「まあ家も料理やってるし、料理の専門学校に行こうか」という感じで(笑)。

——それでその後20年以上料理を。

そうですね。専門学校を出たあと、最初は(山梨県の)石和のホテルで和食をつくってました。

——和食の出身なんですね。

はい。それも深く考えてたわけじゃないんですけど、煮物が好きだったので。両親がお店をやっていたので、祖母と過ごすことも多いおばあちゃん子だったんです。だから、自然と和食も多くなって。

——その後はどんなところで働いていたんですか?

同じ山梨県の河口湖のホテルに行ったり、東京で10年くらい働いたりしてました。東京ではフグの調理師免許なんかも取りました。

——フグですか! あれって「実務経験何年」とかって条件もあるんですよね。

はい。フグを扱うお店で2年以上働いているのが条件です。それが取りたくて。免許がないと料理できない、特別なものじゃないですか。ちょっとかっこいいなって(笑)。

ROCKでも見事な魚さばきなどを見せてくれています。

——何かいいですよね、フグさばけるって(笑)。

その後、ひとり暮らしをしていた祖母が身体を壊して、誰かいっしょに暮らした方がいいということになり、帰ってくることにしたんです。当時独身でしたし。それで清里のお店やまた石和の職場で働いたりしていました。そのころから洋食もやるようになりましたね。

キッチン内にセントラルキッチンがあるようなお店

——ROCKに来たのはいつなんですか?

2017年です。ROCKの火事(2016年夏)のあと再オープンすることになったときに、キッチンも募集をしてて。ちょうど僕も転職を考えていた時期だったので。

——ROCK自体は以前から知っていたんですか?

知ってはいました。ただ、清里は観光地という感じで、そんなに来る機会は多くなくて。清里で働いていたときに何度か来たくらいでした。やっぱり両親がバイトしていたというのが働くきっかけとしては大きかったです。

——実際にROCKで働き始めてからの印象はどうですか?

楽しいですね。職場の人も仲がいいですし。あとはとにかく忙しい(笑)。ここまで忙しいお店はほかではあんまりないです。それもあって、オペレーションも面白くて。ROCKは仕込みと、いわゆるオーダーに対応して料理をする人が完全に分かれてるんです。

——そうなんですか。一般的には開店前に仕込みをやって、そのままオーダー対応して、また足りなくなる前に仕込みという感じですよね。

はい。ただ、ここは1日中アイドルタイムがなかったりするなかでずっと営業しているので、分離してるんです。仕込みの人は基本ずっと仕込み、オーダー対応の人はずっとオーダー対応。ある意味ではセントラルキッチンがキッチン内にあるみたいな感じです。

——なるほど! ここって本当、何でもキッチンでつくってますもんね。この夏のメニューでも9月から「ホットサンド」とかありますけど、素材に使うコンビーフやザワークラウトも自家製ですし。

そうですね。出来合いのものは基本的にないです。ジャムなんかも手づくりしてますし。完成品みたいなものも、キッチンで一度味を調整してから使ってます。それでいて、料理を出すのは速い(笑)。

——オペレーションのたまものですね。

オペレーションはいろいろ考えてます。メニュー替えの時期なんかは、実際につくりながら手探りで……。だからやりながら少しずつオペレーションを変えていってます。

——手間暇かかりそうなものも多いですよね。

たとえば今回の夏メニューだと「ROCK BBQ」なんかは意外と手間がかかってますね。

——え、そうなんですか。シンプルな串焼きに見えますけど。

あれ、串に刺してから焼いてるんじゃなくて、焼いてから串に刺してるんです。食材ごとに火の通り方が違うので。

——あ、そうか! うわ、手間のかかることやってますね。でも、それで全部ちょうどいい火加減にしてるのか。

その辺も含めて、オペレーションはいろいろやってます。

ときには出汁も取る店、ROCK

——ROCKでは洋食が中心ですよね。和食と洋食だとけっこう勝手もちがうんじゃないですか?

でも、基本は変わらないんです。ちょっとやり方が変わるくらいで。大きく違うのは、和食は魚が多くて、洋食は肉が多いということくらいですかね。ただ、ここでも肉の処理とかやるんですけど、その辺は新しいことだったりするので面白いですね。同じ部位の肉でもやっぱり個体差があって、少しずつ違う処理をする。同じだけど毎回同じじゃないというのが楽しいです。それって料理自体もそうなんです。同じ料理でもつくる人が違うとやっぱり少しずつ違ってくる。

——ふしぎですよね。レシピが同じでも味が変わったりする。

その辺はやっぱり経験でしょうね。ちょっとした火加減でも変わってくるので。

——いろんな料理人がいることは、ROCKにとってもメニューの幅が広がるきっかけになってると思います。ヒエップさんが来たことでアジアン系のメニューも生まれたし、小田切さんが来て、和食系のメニューも出ましたよね。

去年の冬に差し込みメニューみたいな形で親子丼をやりましたね。評判もよくて嬉しかったです。

——あれ、おいしかったですね。ここ、たまに出るお味噌汁もおいしいんですよね。

ありがとうございます(笑)。やっぱりその辺は出汁ですね。お店でちゃんと出汁を取ってるので。

——ROCKで出汁を取ってるって、全然イメージないですよね(笑)。

そうですよね(笑)。

移動するROCKキッチンがこの夏登場!

——今小田切さんはROCKでキッチンカー導入の準備をしているそうですね。

はい。今年の4月くらいに話を始めたんです。去年の冬に2〜3回イベント出店をしたんですけど、そのときにキッチンカーで出しているお店も何店舗か見て。やっぱりイベント出店って設営が大変なんです。それで1時間以上かかってしまう。それに冷蔵庫なんかも持っていけないので、保冷剤を使って食材を持っていったりしないといけないし、場所によっては風が強くてガスコンロの火が消えてしまうこともある。キッチンカーなら行ってそのまま営業できるし、設備も整いますから。

——最近、ROCKはイベント出店も増えてますよね。

韮崎の夜市とか、いろんなところから声をかけてもらっていますね。だったらキッチンカーを導入しちゃおうか、と。夏なんかはイベントのない日も、萌木の村の敷地内で出店することができますから。

——萌木の村でですか?

今年のゴールデンウィークも、ROCKのすぐ近くの東屋で出張店舗みたいなものを出していたんです。やっぱり連休はすごく混むので、お客さんに待ってもらうことになってしまう。だけど、カレーやビールだけならすぐ出せるので、それだけでいいという人には東屋の方で出していたんです。

——なるほど!

キッチンカーがあれば、もう少し手を加えたものもできるようになりますから。それで、最初はレンタルで考えたんですが、レンタルもけっこうお金がかかるんですよね。だったらもう買っちゃおう、と。

——キッチンカーって利便性ももちろんですけど、単純にちょっとテンション上がりますよね。秘密基地感があるというか。

そうですね、楽しいです(笑)。夢があるというと大げさですけど。それと、キッチンカーだと僕ら自身がお客さんと直に接することができる。それが楽しいですね。反応がすぐにわかる。

先日の「ROCK Re:birthday」では小田切さんは岩魚を担当。炭火でじっくり焼き上げていました。

——そうか。確かにROCKの場合は普段キッチンの人がお客さんと接することはあまりないですもんね。「ROCK Re:birthday」みたいなイベントのときくらいで。

はい。僕個人は割と口下手なんですけど、喋れないなりにお客さんと会話するのは楽しんでいます。やっぱりつくって出して、おいしいって言ってもらえると嬉しいですし。

ロックの味を甲府や東京でも!

——今どんなキッチンカーを検討してるんですか?

1.5トンくらいのキッチンカーを考えてます。ヤマト運輸のトラックくらいのイメージですね。あれくらいあると何人か入れて、カレーにビール、あとソーセージとかちょっとしたものもできるので。

——ROCKだとサッと出せる看板メニューがあるのがいいですよね。

カレーとビールという看板は強いですね。キッチンカーの場合、イベントでもそうなんですが、たとえばランチタイムのオフィス街なんかに出張した場合、お客さんもお昼休みの時間が限られてる。その人たちに素早く料理を出してあげないといけないですから。

サッと出せるカレーはROCKの看板メニュー。夏のピークには1日2500杯以上出ることも。

——確かに。そういうオフィス街にも出張する予定なんですか?

夏はイベント中心でしょうけど、清里に来る人が少なくなる冬場なんかは、(山梨県の県庁所在地である)甲府なんかに出張してもいいなと思ってます。ROCKの宣伝にもなりますしね。カレーなんかを出しながら、メニューを配ったりすれば「ほかにこんな料理もあるお店です」って知ってもらえる。それと、今ってキッチンカーだけのイベントなんかもあるんです。東京の方ですけど。

——あ、何かありますよね、キッチンカーが集まるイベント。

ただ、僕が聞いたのは幕張でのイベントなんですが、それは1週間とかぶっ続けでやっているらしくて。お客さんはたくさん来るらしいんですが、それだけ長いとどうやって大量のカレーを持っていくかというのが課題に。持っていくというのは現実離れしちゃうので、もう向こうで仕込むしかなくなりそうですね(笑)。行ってみたいとは思うんですけど。全国からいろんなお店が集まるので。

——楽しそうですよね。いつくらいから導入予定なんですか?

7月中にはなんとかしたいと思ってます。

——じゃあ、さっそくこの夏から。

はい。誰がどういうふうに入るか、まだ決まってませんけど、僕も楽しみです。

前の投稿
「旅をして自分の世界を広げながら生きて…
戻る

ROCK MAGAZINE ROCK MAGAZINE