八ヶ岳のパン屋・焼き菓子屋が萌木の村に集結する『八ヶ岳ベーカーズ』。今年の秋は2020年10月11日(日)に行われます。イベント開催に向けて、出店するベーカーズおひとりおひとりを紹介する特集記事を毎週2回お届けします。
4回目の対談は、『Vapeur』の杉本霞さんです。八ヶ岳ベーカーズには2019年秋に参加していただき、今回2回目の出店です。店舗は持たず、オンラインストアと卸しをメインに活動しています。この辺りでは珍しいスチームマフィンとスコーンを専門とする理由などお伺いしました。
独学で始めた酵母からのお菓子作り
―はじめまして。素敵なお子さまにもお出迎えいただきありがとうございます!さっそくですが、お菓子作りを始めたきっかけを教えてください。
杉本 私はお菓子の学校とか製造関係に行ったことがないんです。長女が今9歳なんですけど、この子を出産した時に専業主婦になって、外にもあまり出れなかったのでパン作りを始めたんです。
―最初はパン作りからだったんですね。
杉本 はい。それがだんだん、ネットとかで調べていくうちに酵母の面白さに行きついて、それから自家製酵母でパンを作るようになりました。そんな時に、主人から、「1つ自分で仕事に出来るようなことは無いの?」って言われて、趣味でやってた自家製酵母のパンかな?という感じで始まりました。
―趣味が高じてお仕事になっていくんですね!
杉本 でも何となく焼いてただけなので、自分らしいものって何だろうってずっと考えていました。その時は東京の調布にいて、今から6年位前にこっちに引っ越してきたんです。その時は、パン屋やりたいなと思ってたんですけど、まだ実際に商品は出来ていませんでした。そんな中、自家製酵母で作った蒸しパンが美味しいって知って、それがきっかけで、しかも蒸しパンは作ってるお店もあまり無いしやってみようなかな!って思ったんです。
―確かに、スチームマフィンとスコーンで何種類も作っているお店はあまりないですね。
杉本 そうなんです。スコーンも自家製酵母で作ってます。実はスコーンの方が最初にレシピとして出来ていたんです。ただ自家製酵母のスコーンのは、当時やっているお店もあって、レシピもなくもなかったのでそれだけだと売りにならないかなと思い、1番の売りを蒸しパンにして試作を重ねていったという感じでした。
―なぜ、パンではなくマフィンとスコーンをメインにしようと?
杉本 私そんなにパン屋さんで働いた経験なかったし、何個も何個も作れる自信はなかったのでとにかく最初はスチームマフィンを完成させようと思ったんです。それで始めて半年くらい経ってから、スコーンもそろそろいけるかなと思って二大柱でやってきました。最近ビスケットも追加されたんです!!
―自家製酵母のビスケット美味しそう!!自家製酵母は独学で始めたんですか?
杉本 独学です。クックパッドとか見て、レーズンで起こしたり、季節の酵母でおこしたりするのがすごく楽しくって。何年か前から酒粕で始めたんですけど、一番最初の酒粕をおこしただけで、今は八ヶ岳のお水と山梨の『かいほのか』で継いでいて、おやつ(酵母のエサ)に長野県産の白麹がおススメだよって教えてもらったので、そこから麹をちょっとだけ使って継いでます。
―私は蒸しパンを作ったこと無いんですけど、蒸しパンてルヴァン(発酵種)が必要なんですか?
杉本 メインの粉は薄力粉なんですよ、あと甜菜糖と塩と酵母と水。パンじゃありえない量の水分を使っています。ベーキングパウダーは使っていなくて酵母の力だけで膨らませているのでそれが無いと全然膨らまないですね。
安心して使える地元の食材
―マフィンは天然の色なんですよね?火を入れると色ってくすむと思うんですけどどうすればあんなに綺麗な色が出せるんですか?
杉本 そうですね、蒸すとあまり色はくすまないんです。焼いちゃうと焼き色が付いちゃうんですけど、蒸しは野菜そのままの色が出るんですよ。ここは野菜も美味しいので色々美味しい野菜を取り入れてます。それが一番いい所かなと思います。
―八ヶ岳のお野菜は美味しいものがたくさんありますよね。お野菜を含め食材のこだわりや、調達方法も教えていただけますか?
杉本 価格もあるので全てオーガニックという訳ではないんですけど、野菜とかは出来る限り自分の目に届くところで探します。あとは原材料が分かるもの、添加物とか入っていないものを選ぶようにしています。野菜は直接買いに行ったり、あとパノラマ市場には商品を卸しているのもあって直接お願いしたりしています。
子育てとの両立
―なるほど。確かに、自分の目の届くところの食材は安心して使えますね。工房の中にたくさん蒸籠があるってことは、スチームコンベクション(スチーム発生機能があるオーブン)ではないんですね!?
杉本 はい。うちはコンベクションじゃなくて蒸籠を使っているんです。そんなに大きくないんですけど1回で8個、それを3段24個ずつ、ずっと蒸し続けています。水曜日と土曜日が納品なので、前日に一晩、夜9時から蒸し始めてもだいたい朝の5時とか6時頃までかかりますね。一晩中やっているのでこれを何とかしなくちゃなって思うんですけど・・・。
―蒸籠のほうがより美味しそうです!しかし、効率が問題なんですね。
杉本 毎回子供を寝かしつけてからの作業です。一番下の子を授乳中の時は、背負いながらの作業だったんですよ!おんぶで蒸しあげは過酷でした(笑)
―想像しただけで汗がでてきそうです。
杉本 もうバタバタですよ(笑)そんなんですが、保育園とかでも周りの人に良くしてもらっていてありがたいです。自然環境もすごくいいし。。。お友達でお店をやっている人も多くて、ベーカーズだと「おうちパン屋さん」とか「あとあとかとか。」さんとは繋がりがあるので、「皆で頑張っていこうね!」って話しています。そういうところは恵まれていますよね。
―そういった横のつながりは、この地域ならではの良さなんでしょうね。とはいえ、お一人で商品を作り、子育てもしてとなると商品開発も一苦労ありそうです。。。
杉本 はい。半年かかってやっとビスケットが出来ました(笑)商品開発は時間がかかる!マフィンの新しい味は季節毎にフレーバーが変わります。ちょうど今は(取材日:8月30日)夏が終わって秋になるので、リンゴとか栗とかさつま芋とかカボチャとかその辺を待ちつつ、次はどうしようかなって考えます。すぐ出来る時もあれば出来ない時もあります。商品にならずに季節が終わることもよくあります(笑)
今後の展望
―杉本さんは、店を持たずにオンラインショップと卸だけでやっているのはなぜですか?
杉本 この感じ(子供が4人いてとても賑やか!)を見てもらえれば分かると思うんですけど(笑)お店をやれる状態ではないですね(笑)でもせっかく場所があるので月に2回位でもやれたらいいなって思います。オンラインでもここにに取りに来て下さるお客さんもいらっしゃるので。お店をメインには考えていないんですけど、結構いろんなお店に卸させてもらっているので、今後も卸をメインでやっていきたいですね。でも最近は割とオンラインが増えてきています!
―そもそもここに移住してこようと思ったのは何故ですか?
杉本 調布にいてパンをやる前からこれからどうしていくかって話になった時に、最初は東京でお店を借りたらどうかなって色々考えたんですけど、子供もいるし家賃もすごい高いし、何かあって辞めるってなった時のリスクも高いし。なので家の中でできる事とか色々探してたんです。その時に北杜市は移住者も多いし、主人が小学校の時の合宿で清泉寮に行ったっていう思い出もあって。じゃあ北杜市で物件調べてみようかってなったんです。1件目は狸屋敷みたいな所だったんですけど(笑)2件目がここの中古物件で、ここだったら頑張れるなと思って即決しました。母屋の手前にある小さい小屋は自分たちで立てて工房として使ってましたが、一昨年大きい小屋を建ててもらって工房を移動したんです。最初は3畳の小屋からスタートしたんですよ。
―だんだんと大きくしていったんですね!今後の展望は何かありますか?
杉本 なんだろう・・・(笑)少しずつ商品を増やせたらいいなと思っています。今あるものもちょっとずつ広げていきたいです。あとは、ここがもう少し人が来られるような所になればいいなと言うのが近々の展望ですね。こんな山奥なのでそんなに殺到しなくていいんですけど、今は3密を避ける時代だしまあちょうどいいかな(笑)マイペースにちょっとでも酵母の美味しさを伝えられたらなって思います。
―他のパンのイベントは出店したりしますか?
杉本 そんなに多くは無いんですけどお誘いを受けたら出店させて頂いてます。コロナの前は世田谷におばあちゃんの家があって、お店じゃないんですけど、そこで毎月出していました。でもこんな状態なので2月が最後でしたね。でも、そこでやっていたこともあり、周辺のお店に卸させてもらったり繋がりが出来ました。
―八ヶ岳ベーカーズと他のイベントの違いってありますか?
杉本 もう八ヶ岳ベーカーズさんは本当に丁寧で、ROCKの人は対応が本当に丁寧で頭が下がります!イベントに関しても取材に来てくれる事なんてそうそうないですし、出店者に対しても丁寧に対応してくれて当日もご飯用意してくれたり(笑)イベントとして、出店者側としては本当にピカ1です!本当にありがたいです。
―恐れ多いです。本日はありがとうございました。イベント当日もよろしくお願いいたします!
【八ヶ岳ベーカーズ2020autumn】
日時:2020年10月11日(日) am10:00~pm15:00 ※売切れ次第終了
場所:萌木の村ひろば
入場料:無料
問い合わせ:0551-48-2521 (萌木の村ROCK)