《八ヶ岳ベーカーズ対談企画》感謝の気持ちで作るオーガニックのブラウニー
—こいのぼり・太田敬章さん

八ヶ岳のパン屋・焼き菓子屋が萌木の村に集結する『八ヶ岳ベーカーズ』。今年の秋は2020年10月11日(日)に行われます。イベント開催に向けて、出店するベーカーズおひとりおひとりを紹介する特集記事を毎週2回お届けします。

第5回目の対談は、ベーカーズ初出店『こいのぼり』の太田敬章さんです。太田さんは昨年の6月、河口から北杜市へ移住し、今は141号線沿いの『こいのぼり駐車場』で木金土日に販売しています。なぜブラウニー専門にしたのか、人気店だった河口湖から北杜へ来た理由を伺いました!

作り手の太田さん

移住した理由

―はじめまして。太田さんは、吉祥寺から河口湖へ、そして北杜市に来たとお伺いしました。河口湖では毎回行列ができるほどの超人気店として名を馳せていたと。どうして北杜市に移住されたのですか?

太田 越してきた理由は古民家を買った事なんですけど、もともと吉祥寺から河口湖に越してきたのも田舎暮らしをしたいっていうのがあったんです。河口湖に越した当初から富士山周辺で理想の住まいを探していたんですけどなかなか思うような家が見つからなくて。7年ほど河口湖にいたんですけど、段々とより田舎に行きたいって思いも強くなり、思い切って他の場所を探してみたんです。そしたら今の家を見つけて、軽い気持ちで見に来たら一目惚れしました。

―一目ぼれで移住を決意したんですね!

太田 すごくいい所で、右手に八ヶ岳、左手に南アルプスが見えて、周りが田んぼで、その景色を見ながらブラウニーを作る姿を想像したら決心がつきました。

太田さんのご自宅(須玉町)からの景色(「こいのぼり」Twitteより参照)

―実際に住んでみていかがですか?

太田 北杜市は飲食店が多い所だったので最初はビビってたんです(笑)うちらが通用するのかなって。移住者さんも多くて夫婦で自分達のやってきたもので勝負してる人たちがたくさんいたので、「私たちもやってみたい!」って言う気持ちと「大丈夫かな…」という気持ちが半々でした。

現在の販売スタイルについて

―北杜市に移住してから最初は『おいしい市場』さんで出店されてましたよね?そこから『こいのぼり駐車場』に移った理由はなんですか?

太田 そうなんです。おいしい市場さんで場所を借りていたんですよ。建物と駐車場がしっかりある場所でお客様をお迎えしようっていう気持ちがあったんですよ。それで5か月くらいやらせてもらっていたんですけど、コロナが流行り出して、もし何かあったら責任取れないなと思って、ここは自分たちの土地だし、暖かくなってきて外の方が風通しも良いしという事でここで始めたんです。もともと吉祥寺で移動販売をやっていたので、外で売る事には抵抗がなかったんですよね。

「こいのぼり駐車場」で販売中の様子

ブラウニーとの出会い

―では、吉祥寺のころからブラウニーを作って販売をしていたのですか?

太田 最初から作っていた訳ではないんです。今から12年くらい前になるんですけど、竹製のドームテントの製造と設営をしている友達がいて、その仕事に惚れ込み手伝っている時期があったんです。野外イベントのブース(DJ、照明、PA等)に使われることが多かったんですけど、その時に飲食店をやって欲しいって言われたんです。その時に出したのが今のブラウニーの原型だったんです。2泊3日のイベントだったんですけど、キャンプもして3日目とかは疲れ果てていたんですよね。なのでがっつり甘いお菓子を出したらみんなに喜んでもらえるかなと思って。

―なるほど。でも何故がっつり甘いものって言ったらブラウニーだ!ってなったんですか?ブラウニー専門店てなかなか見ないですよね。

太田 さらに元をたどるとうちの妻が(当時はまだ彼女だったんですけど)、バレンタインの時に僕に作ってくれたブラウニーがベースなんですよ。それがすごく印象に残っていて、絶対うけると思ったのでやろうってなったんです。実際評判がよくて完売しました。そしたら代官山でタイカレーのケータリングカーをやっていた友達がうちらのブラウニーも東京でやったら面白いんじゃないって言ってくれたんです。一番最初は車で売ってたんですよ。珈琲も売ったんですが、初日の売り上げが0で心が折れて(笑)車だとガソリン代ばかりかかってしまうし珈琲は奥が深すぎるのでブラウニー一本に絞ってガソリン代が掛からない自転車にしてみたんです。法律的に大丈夫だったので、自転車の後ろに木の箱をくっつけてそこにクーラーボックスを入れて吉祥寺の商店街に売りに行ってました。ブラウニーは美味しいって自信があったので、売り方を試行錯誤しました。

吉祥寺で自転車でブラウニーを販売していた時のお写真(「こいのぼり」Twitterより参照)

食材選びについて

―ブラウニーのこだわりはなんですか?

太田 2008年の開業当初から言っていることが安心安全。お客様に出すってなった時に、自分が不安だと思う要素のない素材だけを使いたいなって。それが年々新たな素材に出会う度に改良されていったんですよ。

―先ほど安心安全とおっしゃっていたんですけど、ブラウニーの中に入っているくるみとかラズベリーもこだわりがあるんですか?

太田 はい、どちらもオーガニックですね。特にラズベリーは明野産の無農薬でつくったものなんです。ずっと海外のオーガニックのものを買ってたんですけど、こっちに来て材料見直そうってなった時に、明野産のものに出会いました。それがめちゃくちゃ美味しかったんですよ!小麦は八ヶ岳南麓ファームさんの自然栽培のものを使っています。その辺はコストをあまり考えず自分で納得いく材料を使ってますね。マスコバド糖だったり鬼塚さんの平飼い卵だったり。安心安全ていう基準もやっていくうちにお客様や生産者さんへの感謝みたいなのに変わっていって。チョコレートもオーガニックで、フェアトレードなんです。美味しさの追求はもちろん大事だと思うんですけど、児童労働とかそういう暗い側面があるってことを見て見ぬ振りができなくて。農薬とか化学肥料も全て悪いっていうんじゃないんです。どっちかっていうと、無農薬とか手間暇かけてものを作っている人を応援したいっていう気持ちがあるんです。世の中もそれが主流になったらいいなって思っています。

―でもオーガニックを使っているのにそこまで謳ってないですよね。

太田 オーガニックを使ってますって言うとちょっと堅苦しくなっちゃうんですよね。チョコを食べる時にそんなこと気にして食べてほしくないし、純粋な気持ちで食べてもらいたいですからね。何が悪いとかじゃなくて自分が何を選ぶかですね。オーガニックは僕の一番の売りではないんですよ。僕ラーメン好きなんでけど、ラーメンて身体に良い分けなくて、でも食べた時に素材ちゃんとしたの使ってくれてたらめちゃくちゃ嬉しいなと思って。ひそかに身体への優しさみたいなのがあればいいなと思ってるんです。だからオーガニックのジャンクフードとかあればすごくいいなって思いますね(笑)ものすごく拘ったバンバーガーとか(笑)ROCKで是非やってくれませんか?!

―オーガニックのジャンクフード面白いですね!ところで、なんで『こいのぼり』なんですか?

太田 お恥ずかしい話なんですけど妻と初めてデートしたのが5月5日で、しかも『こいのぼり』っていう居酒屋だったんです。それから一年くらいたってから開業したんですけど、当時お菓子のお店ってパティスリー〇〇とか外国語のお店が主流だったんですけど、日本ぽい名前がいいなって思って、考えてたんです。そしたら『こいのぼり』が出てきて、妻に「こいのぼりってどう?」って聞いたら「良いね」って2人一致して、縁起もいいし。

手先が器用な奥様が、商品サンプルや、カウンター等を手作りしています。

今後の展望

―見てて思ったんですけど、本当にお客様を大事にしていらっしゃる感じがします。お客様との会話を大事にされていますよね。

太田 河口湖の時は開店したら行列でとにかく早くさばく、注文受けたら裏で包装してはい、次の方っていう感じで追われてたんですよね。でもこっち来て話す機会が増えて、話しているとこんなにみんな思ってくれてたんだとか、向こうでは美味しいという言葉もあまり聞けなかったんですけど、今は美味しかったという言葉を言って下さるんでそれが嬉しくて、、。特にこのご時世になると沁みますね。選んできてくれてるんだなとか。

―若い女性がSNSで写真をアップしていますよね!

太田 そうなんですよ。うちのお菓子って包み開けるとただの茶色い四角なんですよ。インスタ映えしないと思ってたんですけど、こっち来てから「インスタで見ましたとか」すごい聞くようになったんですよね。若い女の子とかこれ可愛いとか言ってくれて、「君たちこれ可愛いと思うんだ?」って(笑)インスタ映えってカラフルなイメージがあったんですけど地味なのが好きな人もいるんだなって。

「こいのぼり」のブラウニー 左:チョコバー 右:モカ

―今回、ベーカーズ初参加ですが、出店依頼が来た時どう思いましたか?

太田 ちょっとずつ地元の人にも認知してもらいたいなっていう気持ちもあって今回ベーカーズに出させてもらおうと思ったんです。今までもイベント出店のお話は頂いてたんですけど河口湖の直売所をしっかりやりたかったのでお断りしてたんですよ。だけど北杜市に来て皆さんに知ってもらうにはすごくいい機会だなと思って。

―今後の夢とかこうなっていきたいっていうのはありますか?

太田 そうですねー、この土地でやっていこうって決めてるんで、地域の方たちや八ヶ岳に来た人に末永く愛されるお店になりたいですね。まだこっち来て一年なんで、先ずは知ってもらって、いつか「清里と言ったらROCK」みたいな存在になれたら嬉しいと思っています。

―「八ヶ岳ベーカーズ」で新しい出会いはたくさんあると思います!本日はありがとうございました!当日もよろしくお願いします!

【八ヶ岳ベーカーズ2020autumn】
日時:2020年10月11日(日) am10:00~pm15:00 ※売切れ次第終了

場所:萌木の村ひろば

入場料:無料

問い合わせ:0551-48-2521 (萌木の村ROCK)

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