9月14日登場!
タッチダウン初のコラボビール「トロピカルラガー」は奇跡の出会いから生まれた!?

東京などではまだまだ残暑の季節ですが、ROCKでは9月14日から秋メニューがスタートします。秋の旬素材を使ったメニューやハロウィンをモチーフにしたメニューに加え、もうひとつの目玉となるのが秋の新ビール!

10月1日から登場する津金りんごを使った「アップルヴァイス」のほか、9月14日からは「トロピカルラガー」がお店に出ます。

実はこの「トロピカルラガー」、ROCKのビールをつくっている八ヶ岳ブルワリー初のコラボビールなんです。コラボしたのは、同じく山梨県内に醸造所を持つFAR YEAST BREWING(ファーイーストブルーイング)。「東京ブロンド」「東京IPA」といったビールをつくるブルワリーです。

今回は八ヶ岳ブルワリーのヘッドブルワー・松岡風人と、FAR YEAST BREWINGで醸造長を務める栁井拓哉さんに、コラボビール誕生の秘密を直撃! 「トロピカルラガー」の仕込みを終えたばかりのタイミングでお話をうかがいました。

年齢だけでなく誕生日も同じ、奇跡の2人がコラボ!

八ヶ岳ブルワリーのヘッドブルワー・松岡風人(左)とFAR YEAST BREWINGの醸造長・栁井拓哉さん(右)

——「トロピカルラガー」は八ヶ岳ブルワリー初のコラボビールですが、そもそものきっかけは何だったんですか?

松岡 栁井さんと初めて会ったのは2年前だっけ? 山梨県地ビール協会の立ち上げて最初の懇親会で会ったんですよね。それでいろいろ話をしてたら、同い年だってわかって。同い年のブルワーって会ったことがなかったから、それだけでも珍しいんですけど、聞いたら誕生日もいっしょだったんです。

栁井 同じ1983年10月8日生まれ。そんな縁もあって、「じゃあ、誕生日にちなんだ記念ビールでもつくろう」なんて冗談半分に話をしてたんです。自分たちの「35周年ビール」なんて(笑)。まあ、それは冗談にしても、八ヶ岳ブルワリーさんの方にも新しいビールをつくる話があったりして、コラボの話になったんです。

松岡 FAR YEAST BREWINGさんとうちはスタイルもけっこう違うんですよね。うちは伝統的なジャーマンスタイルのラガーで、向こうはベルジャン(ベルギーのスタイル)で、ドライホッピングも得意なブルワリー。お互いの得意分野をかけあわせて、やったことのないことができたらいいなと思ったんです。

栁井 うちは去年山梨県の小菅村に自社工場ができて、そこではエールだけをつくっているんですが、それ以前はラガーもつくっていたんです。だから、社内でもラガーやりたいって声はあったんです。ただ、僕自身もラガーのノウハウは持っていなかったので、知りたいという気持ちがあった。

松岡 うちはうちで、ちょうど(ROCKの総支配人で萌木の村の取締役の)三上くんの方から「トロピカルなビールつくれないの?」って話を持ちかけられてた。うちはホッピーなビールはつくってないので、そういうビールはひとつの挑戦だったんです。せっかくホッピーなビールのスペシャリストであるFAR YEASTさんがいるんだから、コラボできないかと話をしたんです。そうしたら「面白いね」といってくれて、今回のコラボが実現したんです。

——トロピカルなラガーというのは、今まであまり聞いたことがありませんでした。ちょっと珍しい印象です。

松岡 どうなんですかね? ホッピーラガーみたいなものってアメリカでは多いんですけど、日本では確かに少ないかもしれませんね。そもそも日本ではラガーをつくっているところが少ないですからね。つくっているところでも、主力はあくまでエールってことが多い。

栁井 伝統的なラガースタイルをわざわざ香り付けしようという試みは少ないですね。ラガーはラガーとして伝統的な形でつくって、華やかなタイプはエールで、というところが多いかなぁ。

松岡 特にうちはジャーマンスタイルなので。ジャーマンスタイルってホッピーなスタイルじゃないんですよね。

栁井 お堅いからね(笑)。

松岡 そう、お堅い感じでいってるんで(笑)。だからこそ、そこにトロピカルなものが1つでもあったら面白いと思うんです。

ジャーマンスタイルとアメリカンスタイルのコラボ!

——今回はドライホッピングにも挑戦しているんですよね。そもそもドライホッピングって何なんですか?

栁井 通常、ホップは麦汁を煮沸するときに入れます。苦みやアロマを加えるホップです。ドライホッピングは煮沸後、主発酵も終了間近になって温度が下がった段階でホップを入れることです。熱が加わらない分、フレッシュな香りが加わりやすいんです。

松岡 今回はまず煮沸時に5kgのホップを入れました。5kgって、いつものうちからするとすごく多いんです。普段のタッチダウンだと、多くても2kgくらいなので、この段階で軽く2〜3倍入れていることになる。

栁井 そこにあとからさらに入れるからね。

松岡 そう。ドライホッピングで10kg追加しますから。

——ホップの量ってそんなに振れ幅があるものなんですね。

松岡 ありますね。

栁井 八ヶ岳ブルワリーさんみたいなドイツスタイルだとそこまでないんですが、アメリカンスタイルだと幅がものすごくある。

松岡 15kg入れても少ないくらいですかね?

栁井 うちはもっと入れてますね。

松岡 ですよね。だから、トロピカルな香りとかが際立ってくる。(基本的にホップの量が少ない)伝統的なジャーマンスタイルではトロピカルな香りは絶対に出せないんです。

——使うホップはどう選んだんでしょう?

松岡 トロピカルなビールっていうゴールは決まっていたんですが、じゃあどういうホップを使うかっていうところが、まず相談したところでしたね。僕自身、アメリカンスタイルのトロピカルなビールってあんまり飲んだことがなかったんです。ドイツスタイルばかり飲んでたんで。だから、「どういうホップを使えばトロピカルになるのか?」「そもそもトロピカルってどんな香りなのか、マンゴーなのか、パイナップルなのか、シトラスなのか」みたいなところを話し合うのが出発点でした。ホップによって香りはいろいろなので。

——そんなに種類があるものなんですか。

松岡 ありますね。マンゴーとかライチとか、すごく多様です。

栁井 最終的に実際にうちのビールを飲んでもらって具体的なイメージを決めました。


松岡 それで、「東京ブロンド」くらいの香りを基準にしたんです。ホップは「モザイク」というものと、「エルドラド」というものの2種類を使うことに。「モザイク」は日本でもよく使われているオーソドックスなホップです。

栁井 ちょっとグラッシーな、草っぽいテイストもありつつ、ピーチとかマンゴーのような香りがするタイプです。南国フルーツでもシトラスなんかとはちょっと違う、甘い感じのイメージですね。ただ、これだけだとただの「モザイクを使ったラガー」になってしまうからちょっと面白くない。ホップとしてはメジャーなものですしね。だから、今回は「エルドラド」も加えることにしました。

松岡 これは、僕は全然知らないホップでした。ググりましたね(笑)。

栁井 うちでもあんまり使ってないです。あんまりまだ日本に流通してないんですよね。せっかくのコラボだし、珍しいものを使ってみたいじゃないですか。それでいろいろ考えて、そのなかで「トロピカル」ってフレーズを合い言葉に絞り込んでいって選んだのがこのホップです。「モザイク」がマンゴーとかピーチのイメージなので、そこに加えるとしたらどんなものかと考えていったんです。甘めですが、ちょっとココナッツみたいなイメージですかね。

松岡 「エルドラド」はドライホッピングで入れる予定なので、僕もまだ実際に見たことはないんです(※今回のインタビューは仕込み当日のため、ドライホッピングはまだ先だった)。袋自体はもうあるんですけど、ホップって開封しちゃうとどんどん酸化しちゃうんで、早く嗅いでみたいんだけど開けられない。でも開けたい……開けたら絶対よくないよね……

栁井 ドライホップは開けちゃいけないね。

松岡 早く開けたい……。

エール以上にダイレクトにホップの香りを感じるラガーに

栁井 種類が決まったら今度は量とタイミングですね。うちはエールでやっているわけですけど、これがラガーになったときどれくらいホップを入れるか、というのは今回のコラボで試してみたいことのひとつですね。やっぱり実際にやってみないとわからない部分はあるので。

松岡 ラガーとホップってやっぱりかなり違いがあるんです。まず香りが全然違う。華やかなエールに対して、ラガーはどっしりとしていてグラッシーだったりする。ただ、それはホップの入れ具合なんです。ラガーってほとんど酵母の香りがしないんですよね。ジャーマンスタイルだと特にモルトの香りが強い。だから、今回はモルトの香りがあまりしないように、かつホップの香りが際立つようなレシピにしてあります。エール以上にダイレクトにホップの香りを感じる仕上がりになるんじゃないかと思っています。

栁井 あとはドライホッピングのタイミングですね。エールとラガーは、発酵後のプロセスが違うんです。だから、ラガーの場合ならどう変化するだろうと考えながらスケジュールを決めました。

——今回は仕込みから1週間後にドライホップを投入するそうですね。

栁井 何しろ初めての試みなので、いろいろ相談しながら決めました。

松岡 タイミング的には主発酵の終了間近に入れるという形です。うちのタンクの構造的にもそのタイミングしか入れられないので。今日仕込んだばかりなのでまだ何とも言えませんが、香りはすごく出てました。いいイメージが湧く麦汁ですね。

——仕上がりとしてはどういうビールになるんでしょう?

松岡 飲み口がスッキリして、アルコール度数も5%というライトな口当たりのビールというのを狙ったレシピにしてます。そこにホップのトロピカルさが加わる感じですね。喉が渇いているときにグイッといくようなイメージです。いろんな食べ物とも合うと思いますよ。チーズとかもいいし……

栁井 あと、やっぱり南国系だからスパイシーなものと合うんじゃないかな。

松岡 ああ、なるほどね。ROCKの「スパイシーチキンウィング」とかね。

栁井 ああ、合うね。スパイスものはきっと合う。スッキリ流しつつ、甘い香りが出ると思うんで、ピリピリッとした喉の刺激を癒やしてくれると思います。

次のコラボは山梨のフルーツを使ったビール?

——初めてのコラボ、完成が楽しみですね。

松岡 そうですね。もちろんこれも楽しみですけど、今後第2弾、第3弾とコラボしたいと思っているんで。

栁井 今回は八ヶ岳ブルワリーさんで仕込んだんで、次はうちで仕込もうって話をしてます。

松岡 僕が行ってね。実はすでにアイディアもあって、果物を使ったヴァイスをつくろうかって話をしてます。

栁井 ちょうど今年の4月に酒税法の改正があって、ビールに使える原料が増えたんです。果実も使えるようになった。

——八ヶ岳ブルワリーでも今回津金りんごを使った「アップルヴァイス」をつくってますよね。

松岡 コラボビールと並ぶ秋の新ビールですね。こっちは10月1日からお店に出る予定です。山梨はフルーツもいろいろ採れますから、せっかくならそれを使ったビールをつくりたいというのはあります。

栁井 できれば果肉をまるごと使いたいですよね。果物の甘み、果糖って発酵しやすいんです。だから、発酵させるとみんなアルコールになってしまってほとんど残らない。だから、お酒にしたとき残したいなら果肉や皮みたいな香りの強い部分を入れるのがいいんです。丸ごと入れるとなると大変ですが、それができれば複雑な香りも生まれるので、できたらいいなぁと思ってます。


松岡 地域や農家さんとのつながりもあるのはクラフトビールの強みのひとつですしね。小規模な分、ブルワーの個性も出やすい。

栁井 ブルワーの味ってあるよね。「あの人のビールはこういう味だね」なんて話、よくしますよ。

松岡 あの人がつくったらこういう味になるだろうなってイメージがありますね。実際、飲んでみるとそのイメージどおりの味だったりする(笑)。

——そういう意味では、今回のコラボは2人のブルワーが関わっている、新しい味になりそうですね。

松岡 そういってもらえるものになったらいいですよね。

——ありがとうございました! 9月14日からの販売、楽しみにしてます!

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