メニューは畑と自然が決めている?
有機・無農薬農家さんとROCKのふしぎな関係

ROCKのメニューに欠かせない存在のひとつが野菜。サラダやカレーなどの素材としてはもちろん、「焼いた野菜-薬味味噌ソース-」や「まるごとレタス-味噌マヨネーズ-」といった今年の夏限定メニューでは主役になっています。

「焼いた野菜」や「まるごとレタス」は、本当にシンプルですが、その分野菜のおいしさをダイレクトに感じることができるメニュー。もちろんともに地元産の使っています。

夏限定メニューのひとつ、「焼いた野菜-薬味味噌ソース-」。紫蘇、生姜、茗荷、ネギ、ニンニク入りの薬味味噌ソースで、地元産野菜を召し上がっていただけます。

そんなROCKを支える野菜、どんなふうにつくられているんでしょうか? 今回はROCKに野菜を提供してくれている農家さんのところへうかがってみました。

海外で考えた、本当の“普通の生活”

今回うかがったのはROCKと同じ山梨県北杜市で農業を営む「森の農園」の森野晃広さん。農業をはじめて10年ちょっとという新規就農の農家さんです。

森の農園の森野さん。

森野さんが農業をはじめようと思ったのは30歳を目前にしたころ。それまでは東京でサラリーマン生活を送っていたのですが、「このまま一生今の仕事は頑張れない」と思い、仕事を辞め、世界のいろんなところを旅したんだそうです。

「男ってやっぱり30歳前くらいになるといろいろ考えるじゃないですか(笑)。そのときの仕事も、あまり深く考えずに選んだものだったので特に。それで仕事を辞めて、人生最後のロングバケーションだと思って、中国やネパール、インドに3か月くらい行ったんです」(森野さん)

「自分探し」のような森野さんの旅ですが、その内容も強烈!

「ガイドブックに載っているようなスポットに行ってもあんまり面白くなかったんです。じゃあどこに行ったかというと、日本人が歩いてるといろんな現地の人が話しかけてくるんですね。それで、話をして『大丈夫そうだな』って人に頼んで家に連れて行ってもらったり、ガイドブックに載っていないオススメはあるかって聞いて、案内してもらったりしたんです」(森野さん)

そんな旅で感じたのは「都会よりも田舎の方が楽しい」ということだったといいます。

「たとえばセネガルで立ち寄った田舎。声をかけたら『じゃあ付いてこい』っていうから行ったら、3時間も歩かされて(笑)。それで着いたところがすごく素朴でいいんですよ。プラスチックのものなんかも全然なくて、ものは基本的に土に還る素材ばかり。だから、その辺に捨てても問題ないし、暮らしている人ものんびりしてるんです。なんでかっていうと、みんな必要なこと以上に動かないんですよ。ご飯を食べたいから魚を釣って、自分たちが食べる分の野菜があって、と。『車を買うために一生懸命働く』みたいなことがないんです」(森野さん)

例えば数km先の場所へ行こうとするとき、日本人なら、特に地方なら車で行こうと思う人がほとんどでしょう。もちろん歩くより速くて楽です。時間の短縮になる。でも、森野さんが思ったのは「でも、その車を買うためにどんだけ働いてるのか。車をつくるためにどれくらいの人がどれくらい働いているのか」という疑問でした。

そう考えたとき「ああ、これが本当の“普通の生活”なんだな」と思い至ったんだそうです。そして、日本でできるだけ近い生活をするとしたらどんな方法があるだろうと考えた先で見つかったのが農業だったというわけです。

野菜が自然に育つ時期が本当の旬

新規就農希望者と研修生を受け入れてくれる農家さんのマッチングイベントを通して北杜市にやってきた森野さんは、1年間の研修を経て、そのまま北杜市で農業をはじめることに。

森の農園さんの畑のひとつ。ここはズッキーニが育っています。

「10年くらい前だと、農業をはじめようと思うとやっぱり有機農業に当たるんです(笑)。研修先の農家さんも有機でしたし、僕も有機・無農薬でやっています」(森野さん)

有機・無農薬は大変というイメージがありますが、「時期さえずらさなければ何でもできますよ」と森野さんはいいます。

「結局旬の時期だと虫も少ないし、野菜も力を発揮している。だから『旬』なんです」(森野さん)

もともと野菜が育つもっとも自然な時期が旬。その季節に植えれば、ちゃんと育つというわけです。もちろん年によっては不作もありますが、いろんな野菜を育てることでバランスを取っているんだそうです。

たとえば、今の時期はズッキーニやキュウリ、トマトなどの夏野菜が旬。森の農園さんでも、ピーク時にはキュウリで週に700本といったボリュームでROCKに提供しているんだとか。夏の限定メニュー「焼き野菜」ではズッキーニも使われています。森の農園さんのズッキーニが使われていることもあるでしょう。

畑で育っているズッキーニ。ズッキーニは成長が早く、収穫の時期は朝「まだだな」と思ったものが午後には採りごろになっていることもあるほど。

ちなみに、森野さんがもうひとつ大事にしているのが、畑を耕耘しないこと。畑を休ませているときはいわゆる雑草も生やしっぱなしにしています。

休んでいる森の農園さんの畑。ぎっしりと草が生えています。

農業にはいろいろな方法があり、考え方もさまざまですが、森野さんが大事にしているのは土。耕耘すればするほど土が乾き、さらさらになり、土の中の有機物も掘り起こされてしまう。そうすると微生物たちも死んでしまう。耕さず、草も生えたままにすることで、土には適度な水分が残り、有機物も蓄えられるというわけです。草が生えることで土が日陰に入るのもポイントなんだそうです。

採れた野菜から料理を考えるROCK

そうしてできたがROCKの料理に使われているのですが、話を聞いてみると卸し方もちょっと変わっているんです。

通常、レストランなどでは季節ごとにメニューを決め、それに合わせて材料を調達するというのが基本です。でも、ROCKと森野さんの関係はその逆に近いんです。

「うちの場合は通年で同じものをつくれないんで、その時期ごとに旬のものを出しているんです。ROCKさんの場合は『こんなのつくってるんですけど』っていうと、『あ、じゃあ使います』って感じで取ってくださってるんです。うちからするとすごく助かります(笑)」(森野さん)

春から初夏ごろにはタマネギなども。森の農園さんはROCKのほかに、「八ヶ岳やさい倶楽部」の一員として生活クラブ生協・山梨や、山梨県内にあるアピタ双葉店や石和店、田富店、山梨さえきなどにも出荷されています。また、東京都内のさえきやファミリーマートにも出荷しているそうです。

もちろん「こんな野菜ありますか?」「これくらいありませんか?」と相談が来ることもありますが、森野さんから「今週こんなのがこれくらい採れますけど、どうでしょう?」と声をかけて買ってもらうことが多いそうです。
例えば、前日に料理長の菊原さんにLINEで伝え、量などが決まったら翌日持っていくという形を取っているんです。菊原さんも出てくる野菜のラインナップを見て「じゃあ、こんな感じで使おう」と決めることもあるとか。レストランとしては大型なROCKですが、すごく柔軟な形で素材を仕入れているんです。

実はROCKと取引をはじめるきっかけも、森野さんの飛び込み営業だったということですが、そのときも菊原さんが「あ、じゃあ、お願いします」と即答し、森野さんの方が驚いてしまったそうです。冗談のような、でも実にROCKらしいエピソードですね。

あらかじめ決まったものが決まったときに入ってくるとは限らない農家さんとROCKの関係ですが、だからこそ、ROCKの野菜は旬でいっぱいになります。自然に採れる、本当の旬の野菜を仕入れ、それに合った料理や調理法を考えているというわけです。

一番おいしいときの野菜が集まるROCK。この夏はお肉やカレーだけでなく、野菜のメニューにも注目してみてください!

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