1日かけて煮込むROCKのカレー、本当にそんなに煮込む意味はあるの?
密着&実験してみました

ROCKの不動の名物・カレー。年間15万食もの数が出る名物メニューです。その味の秘密のひとつが煮込みで、最低でも10時間、1日かけてゆっくり煮込み、その後さらに2日ほど寝かせてようやく完成となります。

が、ここでひとつ疑問が。カレーをはじめ、料理は「じっくり煮込めばうまい」というイメージがありますが、「それは果たして本当なのか?」ということです。 私も煮込みに情熱を燃やした時期がありました。何時間も煮込んで、「さすが煮込んだカレーは違う!」と悦に浸ったりもしました。が、正直にいえば……。

手間暇かけてじっくり煮込んだカレーと、1~2時間煮込んだカレーを食べ比べて違いがわかるか、今、自信がありません! 「私のような素人には違いなんてわからないのではないか……?」という疑問がわいてきているんです。

そこで今回は実際にROCKのカレーをつくる様子に密着。その秘密を探るとともに、最後は食べ比べをして「1日煮込むことに本当に意味はあるのか?」をチェックしてみることにしました!

タマネギ60kg、お肉は80kg……とにかく大量に煮込む!

とにかくじっくり煮込むROCKのカレー。煮込むために仕込みは午前中からスタートします。取材に行った日も10時前から準備が始まっていました。 なにしろ1回につくる量は、時期によっても違うものの、おおよそ1,300人前。調理釜も材料も、今まで見たことのない大きさ、量です。 まず最初はタマネギ、人参、ジャガイモを切る作業。タマネギだけで60kg、さらに人参10kg、ジャガイモ10kgを切っていきます。気が遠くなります……。

タマネギだけでこの量!

60kgのタマネギを約20分でカットし、10時30分頃にはタマネギの炒め作業が始まります。この辺はやっぱり家庭のカレーと同じですね。じっくり炒め、いわゆる飴色タマネギのようにしていきます。

まずはタマネギが投入されます。

量が多いこともありますが、この炒め時間がまず1時間近く。この時点で家ではなかなかやる気が出ない作業です。ちなみに、炒める時間は季節によってもかなり変わるそうです。新タマネギなどは水分が多かったりするためです。色合いを見ながらタイミングをはかっていくそうです。

鍋を覗くだけでタマネギが目にしみます。

タマネギを炒めている間にほかの野菜もカット。人参やジャガイモは皮も剥かないといけません。普段家なら、ジャガイモ1個でも面倒に感じる作業を、さすがの手際で進めていきます。

ジャガイモもドーン!

人参もドカッと!

タマネギがしんなりとしてきたら、次はお肉を投入します。もちろんお肉も大量! 牛もも肉やスネ肉、合計80kgがお鍋に入ります。

どっさりお肉が入れられます。

ちなみにこのあとも調味料や隠し味は入りますが、基本的な具材はこれですべて。材料自体はすごくシンプルなんです。

お肉が入って軽く炒めたら水を足していきます。

ここでサッとあく取りも。

一方で量は圧巻。お肉とタマネギ、人参、ジャガイモだけで合計160kgもあるわけです。野菜はその多くが水分とはいえ、最終的にできあがるカレーは200リットル前後なので、大半は具ということになります。

12時ごろから本格的に煮込みスタート

お肉を入れて炒め、ある程度火が通ったら人参、ジャガイモを投入。この時点で作業開始から2時間以上。12時近くになっています。

12時。本格的に煮込みスタート。

これでようやく作業は一段落。隠し味の追加などもありますが、基本的にここからは火を弱めて煮込みの時間になります。 家庭のカレーだと多くの場合、ここまでくれば完成目前というところですが、ROCKのカレーはこれからまだまだ煮込みが続きます。 14時ごろ確認するとこんな様子。

14時。この辺の様子は量の違いこそあれ、家庭でも見たことがある印象。

まだ具材の形がしっかり見えます。それでも、煮込みはじめてもう2時間。おうちなら多くの人が「けっこう煮込んだ」と考える時間ではないでしょうか。 煮込みに入って4時間。16時ごろになると……

16時。かなりペースト感が出てきました。

野菜はかなり溶けてきて、形が見えなくなってきています。おうちカレーならこれくらい煮込めば「気合いを入れた大作」という感じではないですか? もう味付けしてできあがりでよくないですか? 16時くらいからはさらに火を弱くして超弱火で煮込んでいきます。そして、18時時点の様子がこちら。

18時。煮込みも6時間ですが、まだお肉の形も見えます。

野菜はもうほぼその姿を確認することができなくなっています。この辺になってくると見た目は大きな変かはありません。ただ、匂いは最初と比べるとかなり変わってきています。 煮込みはじめたときはやはりお肉の独特の香りが強かったのですが、6時間の煮込みを経てかなりマイルドな香りになっていました。

煮込みはこのままスタッフが帰る23時ごろまでじ~~~~っくり続きます。火が止まったあとも余熱で少しずつ煮込みが続くので、実際には12時間以上煮込まれる形なんです。

煮込みから1日、ようやく味付けまで完了

長い長い煮込みの時間が終わり、迎えた2日目。朝はまずお肉の様子などをチェックして再度混ぜていきます。 2日目になるとかなりROCKのカレーらしくなってきました。

2日目のカレーの様子。味付け前ですが、かなり「ROCKのカレー」らしい姿に。

そして、その後味付けを開始。ここでもスパイスや隠し味が大量に入れられます。 ROCKのカレーでは欠かせないイチゴジャムもここで投入。

隠し味のイチゴジャム。

こちらも大量! とはいえ、1,300人前という量ですので、1杯あたりで考えれば文字通り「隠し味」程度の量なんですね。それにしても、この量のイチゴジャム、初めて見ました。 味付けが終わり、再度軽く火を入れて、すべての作業が終わったのは12時30分。実に約27時間かけて、ようやくROCKのカレーの原型ができあがりました。

2日目の12時過ぎ。ようやく完成。ここから寝かせに入ります。 ただし、ここまでできあがっても、お客さんのテーブルに並ぶのはまだ先。これから最低2日間冷蔵庫で寝かせてようやく本当に「ROCKのカレー」が完成します。長い……本当に長い道のりでした……。

中途半端な煮込みは逆効果!?

さて、ROCKのカレーづくりに密着していきましたが、まだ重要な検証が残っています。 「煮込むとそんなに味が変わるのか」という検証です。 今回は特別に煮込み始めてから2時間ほどのものを少し取り分けてもらい、味付けをしてカレーとして仕上げてもらいました。

そして、寝かせる前の、できたばかりのカレーも用意。これと2日寝かせた完成版の「ROCKのカレー」を食べ比べます。 さっそくカレーを持ってきてもらうと、あれ? 4種類ある。

試食したのはこの4種類。

なんと今回はさらにシークレットのカレー1種類を加えてくれたんだそうです。難易度が上がった……。 ともあれ、実際に4種類のカレーを食べ比べてみます。 どれがどの段階のカレーかは聞かずに食べたのですが、Aは煮込み2時間のカレーと見た瞬間にわかります。まだ肉がゴロッとしていますので。 では、味はというと……あ、これ、食べたことはある味です。

一言でいうとグッドオールドデイズのビーフカレーといった感じ。実際、こういう味のカレーを出しているお店もあると思います。野菜はおおむね溶け込んでおり、おそらくお肉の旨みも出ているのでしょう。カレーソース自体はおいしいなと感じました。

試食の様子。どれもうまい。

しかし、「ROCKのカレー」とはまるっきり別物。この段階では「旨みが溶け込んだカレー」なのですが、ROCKのカレーは煮込み後の様子を見てもわかるとおり、いってしまえばほぼお肉や具のペーストに味付けをしているようなもの。ハッキリと味の違いを感じるものでした。

それともうひとつ面白かったのはお肉の味。ゴロッとしたお肉が入っているので贅沢感があると思ったのですが、食べてみるとお肉は固くてスカスカ。正直なところ、お肉の美味しさは全くないという感じでした。ただ、こういう残念なお肉、おうちカレーで食べたことがあります。

なぜこうなってしまうのか? 答え合わせのあと聞いてみたら、意外な答えが返ってきました。 実はお肉は、部位によっても時間が違いますが、基本的に適切な煮込み時間というものがあるんだそうです。今回使っているスネなどの場合、煮込みはじめると柔らかくなるのですが、1時間以上煮込むと固くなってしまうとのこと。つまり、2時間ほど煮た状態はまさにカッチカチ。煮込み具合として最悪のタイミングだったというわけです。

ROCKの場合はさらにその固くなる時間を遙かに超えて煮込むため、最終的にホロホロと崩れ、繊維のような状態になっていくからおいしいんですね。 煮込み時間は単純に長ければ長いほどおいしくなると思っていたので、これはビックリでした。要するに私のおうちカレーの場合、中途半端に煮込むことで、お肉としては一番おいしくない状態にしてしまっていたというわけです。

煮込むならお肉に合った時間にするか、徹底的に煮込みきるというのが必要だったんですね。

寝かせる前か、寝かせたあとか……最後の難問

さて、2時間のものの味の違いがわかったとところで残りの3つの試食に。

残りが難問(おいしいけど)。

ひと皿はどのタイミングのものかわからないものの、何となくいつもの「ROCKのカレー」とは印象が違う味。ジャガイモのデンプンのような風味が舌に残りました。 問題は残りの2皿。ひとくち食べると確かにそれぞれ印象は違うのですが、どちらも「ROCKのカレー」にかなり近い味です。 これはおそらく寝かせる前と寝かせたあと。そこまでは見当がついたのですが、どっちがどっちか判断できない……。

悩んだ結果、Bを寝かせ前、Cを寝かせ後としてみたのですが…… 答えは逆! 最後の最後、「寝かせた方がお肉の塊感が少ないはず」という味以外の要素に頼って、少し固形のお肉があった方を寝かせ後とした結果、ハズしてしまいました……(たまたま少し固まり感のある肉が入っていただけでした)。

ど素人の私はズバリ当てることはできませんでしたが、このふたつ、味の違いは確かにある。どの辺がポイントか、解説してもらうと「寝かせる前のカレーはやっぱり少しスパイスが尖っています。寝かせたものはこれがマイルドになっているでしょう?」とのこと。

いわれてみると確かにそのとおり。片方はスパイスの香りがしっかり印象に残ります。 基本はROCKのカレーとしてできあがっているので、かなり印象は近いのですが、やはり寝かせた方が全体的にマイルドですね。

ちなみに、どのタイミングのものかわからない、シークレットのカレー・Dはたまたま冷凍庫に残されていた長期保存されたカレーとのことでした。寝かせれば寝かせるほどおいしくなるかといったら、また違うということですね。

「ただ煮込む」のでなく「正しく煮込む」

というわけで、結論としては「煮込む時間で味は(素人でもわかるくらい)変わる」、そして「煮込む時間には適切な時間がある」ということが実食してハッキリとわかりました。 「とにかく煮込む」というのはROCKのカレーの美味しさの秘密としてよく語られることですが、「ただ煮込むから」というわけではなく、「徹底的に」煮込む必要があるから煮込んでいたんですね。 徹底的に煮込んだ末のROCKのカレー。まだ食べたことがないという人は、ぜひ実際味わってみてください!

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