八ヶ岳のパン屋・焼き菓子屋が萌木の村に集結する『八ヶ岳ベーカーズ』。今年の秋は2020年10月11日(日)に行われます。イベント開催に向けて、出店するベーカーズおひとりおひとりを紹介する特集記事をお届けします。
第7回目の対談は、『カントリーキッチンベーカリー』の吉野栄一さんです。八ヶ岳ベーカーズ初、長野県富士見町からの参加です!薪窯食パンとクルミレーズンが人気のパン屋さんです。カントリーキッチンベーカリーならではの石窯で焼くパンについて詳しくお話を伺いました。
30年続く石窯
―はじめまして。今回は、八ヶ岳ベーカーズに参加していただきありがとうございます!
吉野 こちらこそ!元々イベントは好きなんですよ!でも人が足りなくて。。。
―私は初めて伺ったのですが、カントリーキッチンベーカリーは長くやられているお店だと伺いました。
吉野 建物自体は1991年からなので30年ですね。途中でオーナーが変わっているので、今のオーナーになってからは12~13年です。
―30年前からレストランとベーカリーやっているんですか?
吉野 最初はベーカリーだけでした。この敷地を建てたオーナーさんの住居だったんですけど、最初パン屋さんだけあって、その時にキッチンストーブをアメリカから輸入し、ドイツから石窯を輸入して、それを石窯職人さんに組み立ててもらい、それからずっとパンを焼いています。
—組み立てからしたんですね!だわりの石窯ですね!当初からずっと石窯を使ってたんですか?
吉野 そうです。30年前からですね。今はそれだけだと焼き切れないので電気も使って使ってますけど。
―建物も素敵だし、パンも種類が豊富ですが、カントリーキッチンベーカリーのコンセプトはなんですか?
吉野 自然を大事にするという事です。あとはやっぱり薪窯ですね。ぶどうの枝とナラの薪を使ってパンを焼いていくんですけど、ナラが大体2年乾燥させたものを500本、ぶどうの枝が1年乾燥させたものが2000本、そのぶどうの枝を集める所から始めるんですよ。
―すごい量ですね!集めるところからって大変ですね。薪はどこから集めてくるんですか?
吉野 山梨はぶどう農家さんが多いので、色々声掛けて持ってくるんですけど、窯の長さがあるので一つ一つの長さを同じ規格にしたいんですよ。だから選定した枝を切って結わく作業を農家さんにお願いしています。やってくれないところは自分たちで行って作業します。それだけでも大変なんですけど運んで乾燥させるまでやります。長野山梨を何往復するか分からないですね。今年はコロナの影響で実習生が少なくて、縛る人がいないので去年より人手が足りないし、近年はぶどうの枝をチップにしちゃうんですよ。だからうちになかなか入ってこないんですよね。なので記事載せてもらえるならうちに枝を提供してくれるぶどう農家さんを募集したいです(笑)
―ぶどうとナラの木、その2種類を使う理由は何ですか?
吉野 最初窯を立ち上げる時に余熱をかけるんですけど、その時はナラの太い枝で、ゴンゴン燃やして一気に320~330℃まで上げるんです。落ち着いたら一度パンを入れて温度を下げ、焼きあがったらぶどうの枝を入れます。ぶどうの枝は細くて、軽くて、乾燥してるんで、パッと燃えてパッと消えるんですよ。消えたらまたすぐ次のパンを入れられるんで、最初はナラ、焼いてる間はぶどうの枝、という風に使い分けをしています。やっぱり電気窯で焼いたパンと薪窯で焼いたパン、全然風味が違いますね。
―木によって窯に入れるタイミングが違うんですね。石窯を使うパンと電気窯を使うパンとは使い分けするんですよね?
吉野 そうですね、薪窯で焼けば全部美味しくなるっていうもんじゃないんです。今50種類くらい作っているのですが、大きなパンは薪窯で焼けるんですけど、小さいパンを薪で焼くと真っ黒なっちゃいます。大きいパンは黒くても焦げているようで焦げていないんですよ。バリっとした食感で中はモチっと。
―薪窯食パンが人気だと聞きました。最初聞いたとき、食パンを薪窯で焼くってどんな感じになるか気になりました!
吉野 そうです、美味しいですよ!今はクルミレーズンと薪釜食パンとバゲットをメインで焼いています。
―薪窯だと使うまで時間が掛かるじゃないですか。朝早くから薪を仕込み始めるんですか?
吉野 そうですね、3時間くらいかかるんで、何時からっていうのは働き方改革があるんで言えないんですけど(笑)
食材選びのこだわり
―カントリーキッチンベーカリーのパンの売りは何ですか?
吉野 薪窯で焼いたパンですね。あと菓子パンも焼くんですけど、うちはマーガリンを使わないんです。普通のパン屋さんは菓子パンに大体マーガリン使うんですけど、私が味が嫌なので、美味しいものを口にしたいし、辺鄙なところにあるんでわざわざ来て下さったお客さんに街中と同じパンを出していたんでは来てくれないかなと思って。だからこんなにバターを使うパン屋さんは他にはなかなかないと思います。洋菓子屋さん並みのバターの消費量なんで、本当に美味しいです。
―洋菓子屋さん並みのバターの消費量って凄い!菓子系のパンはマーガリンのイメージなんですけどバターなんですね!食材は八ヶ岳周辺のものを使っているんですか?
吉野 もちろん、食材も拘っています。キッシュも信州サーモンを自分たちでスモークして乗せているし、フィリング系は全部ではないですけどひと手間加えてますね。10月から出るアップルパイ、リンゴは津金産の紅玉なんですけど、幻のりんごと言われていてとにかく美味しいんですよ。でも量が少ないから市場に出ないんです。だから直接農家さんに行って買い付けるんです。ファンが多いんですよね。紅玉もあまり作られていないんですけど、うちは20年位の付き合いなので農家さんがずっと栽培してくれていつも畑ごと買うんですよ。畑ごと買った紅玉が終わったらアップルパイも終わるんですけど、めちゃめちゃ美味いですよ!材料は美味しいもにをちょっと手を加えてます。
―津金りんごってこっちに来て始めて聞いたんですが、使っている人はみんなとても美味しいって言います。新商品は数か月に一度ペースですか?
吉野 作るのが私しかいないので、常に新しいものを季節毎に作るようにはしてるんですけど、さすがにずっと閉じこもってると情報が入ってこないので、色々食べ歩いてこれとこれを組み合わせようとか、自分なりにやってます。あとは売れているものと美味しいものを組み合わせてます。八ヶ岳の土地を加えればオリジナルになるんで。情報は常に仕入れていますね。
―なるほど、常にアンテナを張って商品開発に活かしてるんですね。八ヶ岳でパンを作るメリットってなんでしょうか?
吉野 それはもう空気と水ですね。パンは酵母なんで生き物なんですけど、本当にその土地の空気と水に影響を受けるんですよ。イタリアのクリスマスに食べるパネトーネっていうパンがあって、パネトーネ地方のパネトーネ種を使ったパンなんですけど、その土地で育った菌だからパネトーネ種って言えるんですよ。だからその土地土地の名前が付いた種になっているので、ここで起こした自家製の酵母もありますけど、よそに持って行ったらまた全然味が変わってしまうんです。ここで20年種継ぎをした酵母の風味って言うのはありますね。あと出来上がったパンを爽やかな高原の風に当たりながら食べると2割増しで美味しくなりますよ、本当に(笑)
―確かにこの場の雰囲気も美味しさの1つな気がします。自家製の酵母も作っているんですか?
吉野 そうですね、最初ぶどうから起こした種を全粒粉で種継ぎして20年ですね。ライブレッドとカンパーニュに使ってます。重くてずっしりしてるんですけど、噛みしめると酸味があるのでじゅわじゅわっと美味しさが出てきます。硬いんで薄くスライスしないと抵抗がありますけど人気はありますよ。
―じわじわ酸味が出てくるパン好きです。職人さんは吉野さんだけなんですか?
吉野 そうですね、季節の補助で来てくれる人はいますけど。あとは窯の出しをやったり薪を運んでくれたりサポートしてくれる人はいます。
八ヶ岳ベーカーズ初出店!
—もともとこちらでパン作りをしていたんですか?
吉野 いえいえ、生まれは千葉なんですよ。で、山梨でパンやってだんだん北上してきました。20数年パンしかやっていないですね。八ヶ岳に来る前は千葉の方でパンをやっていました。
―じゃあ縁もゆかりもない土地なんですね!他のパンイベントにはよく出店されるんですか?
吉野 カントリーキッチンで出たのはアウトレットで3回くらいです。前のお店では、しょっちゅう出てたんですけど、声が掛かって行きたくても人がいないんでずっと断ってたんです。ようやく人が確保できてきたんで、なるべく参加できるところには参加しようと思ってます。
―そうなんですね、八ヶ岳ベーカーズに出店して頂けて嬉しいです!今回八ヶ岳べーカーズの話が来てどう思いましたか?
吉野 嬉しかったですね。あとはさっきも言いましたけど、声掛かったらなるべく参加しようと思っていたので、お店の宣伝にもなるし。そこでパンを食べてもらって気に入ってくれたお客さんが興味を持ってお店に足を運んでくれたら良いなって思います。
―最後に、ベーカーズへ意気込みはありますか?
吉野
即完売(笑)お客さんがいれば売る自信はあります!
―頼もしいです!ぜひ一緒に盛り上げましょう!本日はありがとうございました。