《八ヶ岳ベーカーズ対談企画》「ビーガンのお菓子は作るのが楽しいんです!」
—菓子屋ギンガ・内田真規子

八ヶ岳のパン屋・焼き菓子屋が萌木の村に集結する『八ヶ岳ベーカーズ』。今年の秋は2020年10月11日(日)に行われます。イベント開催に向けて、出店するベーカーズおひとりおひとりを紹介する特集記事をお届けします。

第6回目の対談は、『菓子屋ギンガ』の内田真規子さんです。甲斐駒ヶ岳の麓白州の工房でビーガンの焼き菓子を作っています。「ギンガ」のお菓子の特徴である、「ビーガン」や「スパイス」との出会いから、今のライフスタイルに至るまでのお話を伺いました。

作り手の内田さん

―はじめまして。『菓子屋ギンガ』というお名前素敵ですよね。由来はなんですか?

内田 夫と一緒につけたのですが、まず「菓子屋」とついていた方が分かりやすいかなと思って。あと「星」をイメージするものをいれたくて、最初は私が「星々とかどう?」と提案すると、夫が「ちょっと可愛らしすぎない?」と(笑)それでふと「ギンガ」という言葉が出てきて、ある朝私が何となくギンガのロゴを描いたのですが、それを夫がロゴマークにしたんです。

それで『菓子屋ギンガ』になりました。深く考えたというより、そんなやり取りがあったんです。ギンガのロゴを描いたときは、八ヶ岳をイメージしていました。山に星が浮かんでるっていう。

「菓子屋ギンガ」のロゴ入りの看板

―なるほど!確かにパッと見たときに山に見えました。内田さんも白州には移住してこられたんですよね?

内田 はい。東京の豪徳寺で夫とカレーとお菓子のお店をやっていて、いつか自然のある所に住みたいと思っていました。夫の両親が移住して小淵沢に住んでいて、尾白川渓谷に連れて行ってもらったことがあったんです。それで北杜市っていう場所を知りました。

―尾白川渓谷を見たときの衝撃はすごいですよね。。。

内田 直感なんですけど、ここに住むことになるなって思ったんです。そしたら本当にそうなりました!その時はまだ東京でお店をやっている時だったんですけど、色んなタイミングが重なって流れるように移転しました。最初はここでもカレー屋として、娘が産まれて一歳くらいまでやってました。わりと忙しかったので、夫婦で話し合って私は子育てに入ったんです。

―カレーをやっていた時は旦那さんと二人でお店をやっていたんですか?

内田 カレーは夫が担当で、私はお菓子を。それでカレー屋さんに合うようなスパイスを使ったお菓子を作りたいな、とレシピを考えて製作していました。

―カレー屋さんでお菓子も売ってるって、なかなかないので面白いですね!お菓子作りはもともと趣味だったんですか?

内田 ビーガンに興味を持ち始めてから、ビーガン系のレストランで働いたり、マクロビ系のお菓子と食事のお店でも働いてました。私が家でビーガン料理作るようになった頃に、夫がインドカレーに興味を持ち初めて、美味しいインドカレー屋さんを聞きつけてきて行ったんです。そしたら2人して「野菜だけでこんなに美味しいカレーが作れるんだ?!」と衝撃を受けて。今でこそビーガンもインドカレーも普通だと思うんですけど、その当時は10年くらい前だからビーガンのお店もそんなにないし、カレーも今ほど人気じゃなかった気がします。それでやってみたいなと、2人でインドカレーとお菓子のお店を始めたんです。

―今でこそビーガンはかなり浸透してきましたが、内田さんがビーガンにハマるきっかけって何だったんですか?

内田 すごく遡ると、大学時代のバイトの帰りに、輸入食品店の異国のお菓子が売っているコーナーに立ち寄るのが大好きだったんですよ。普通に味がわかるものより、これはどんな味がするんだろうっていうようなお菓子が気になって。オートミールや、ライスミルクとか、ごまとナッツを固めたバーとか、面白いなと思っておやつに食べてました。ちょっと変わったもの、みんなが敬遠するような驚きがあるものが好きだったみたいです。ある時ビーガンていう言葉を聞くようになって、自分でも作りたくなったんですよね、多分。。。結婚してから、だんだんと卵とか牛乳とかバターとか使わない、シンプルな料理をするようになってきて、ビーガンの食事の本を買って作ってみたりしていました。使ったことのない素材を試してみたり、普通に作ってるよりも楽しくて。それでビーガン系のお店で働きたいと思ったんですよね。ビーガンって、一般的には厳しいとか戒律的なイメージがあると思うんですけど、当時の私にとっては、そういうことではなくて、新鮮で。普通のお味噌汁を作るよりビーガン料理を作る方が楽しかったんですよね。

—今もビーガンの食事を続けているんですか?

内田 カレー屋時代は、ずっとビーガンでした。私は元が丈夫なのか、その頃も体調も体重も全く変わらなくて。娘が保育園に入るタイミングで給食に牛乳もお肉も出るだろうし、あらためていろいろと調べたり、考えていく中で、娘にあれもこれもダメっていうような子育てはしたくないなと思ったので、それでちょっとずつ変わっていきましたね。今はそのときのからだの調子で食べたいものを自由に選ぶ感じです。

―ビーガンで作るお菓子って難しそうなイメージです。。。

「菓子屋ギンガ」のクッキー(「菓子屋ギンガ」Twitterより参照)

内田 レシピは複雑なものから簡単なものまであると思うんですけど、美味しく焼くには、工夫が必要だと思います。たとえばバターや卵を使わない分、ココナッツオイルなどの植物性のオイルの特性を生かしたりとか、素材の使い方の工夫。それを考えるのも楽しいですね。

―ビーガンに拘るっていうよりは、作るのが楽しくてしょうがない感じですね!

2019年11月に発売した著書。(「菓子屋ギンガ」Twitterより参照)

内田 そうですね。もともとそんなにお菓子は食べないんですけど、自分がこういうお菓子を作ってみたいとか、食べてみたいなって思うものをカタチにしたくてレシピを考えて、それを喜んでいただけたらと思って製作しています。美味しいものが世の中に沢山たくさんある中で、受け取ってくださる人がいるから成り立っている仕事だとありがたく思います。

―お客さんはもともと東京からの方たちなんですか?

内田 東京の時からのお客さんもいらっしゃいますし、卸先から知っていただいたり、いろいろなきっかけで知っていただいたと思うのですが、とてもうれしいのがリピーターさんが多いことです。毎月ご注文くださる方もいらっしゃいます。

―時々お店を開けることもあるんですよね?今の通販のみのスタイルはいかがですか?

「菓子屋ギンガ」の店舗外観。現在は商品の受け渡しのみ。

内田 遠方にいらっしゃるお客さまや、必要としてくださる方に確実にお届けできるので、通販は続けていきたいと思っています。お店での販売については、この10月末からまた再開したいと考えています。対面販売のちいさなお店ですが、この土地のゆるやかな雰囲気も感じていただけたらいいなと思いますし、直接お会いすることも大切に考えたいと思っています。

―今回のベーカーズとの対談で子育てしながら活動している方とお話しすると、はやり仕事と子育てとのバランスに苦悩した経験がある方が多い印象でした。

内田 私にとってお菓子を焼くことはすごく大事なのですが、良い状態でお菓子を作るためには、やっぱり家族との時間が大切だなと思います。私、突っ走っちゃうタイプなので、家族はそっとしておいてくれるんですけど、それはそれで悲しいじゃないですか。今しかできないことを大切にしようと思ってます。せっかくこういう自然豊かなところに住んでるのに暮らしが御座なりになると、何のために来たんだろうってなってしまうので。遊びに行ったり、ちゃんとご飯作ったり、暮らしを整えたりする時間も大事だなと思ってます。

―お休みの日は家族みんなでどこか行ったりするんですか?

内田 そうですね、今は家族みんなでクライミングにハマっています。

―今後の展望などございますか?

2019年秋の八ヶ岳ベーカーズにて。毎回旦那さんと娘さんと一緒に参加してくれます。

内田 その時々に形にしたいものをしていくってことですかね。それが続けばいいなって思っています。そんなにお菓子に拘らないかもしれないし、正直に生きたいっていうのはありますね。その時々、大切にしたいってことを大切にしていきたいですね。

―なるほど。今日は貴重なお話ありがとうございました!イベントでもよろしくお願いします。

【八ヶ岳ベーカーズ2020autumn】
日時:2020年10月11日(日) am10:00~pm15:00 ※売切れ次第終了

場所:萌木の村ひろば

入場料:無料

問い合わせ:0551-48-2521 (萌木の村ROCK)

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