八ヶ岳のパン屋・焼き菓子屋が萌木の村に集結する『八ヶ岳ベーカーズ』。今年の秋は2020年10月11日(日)に行われます。
イベント開催に向けて、出店する作り手おひとりおひとりを紹介する特集記事を毎週2回お届けします!今年4月、萌木の村でパン屋を始めることを夢見て移住してきたスタッフの村瀬が、個性豊かなパン・焼き菓子の作り手と対談しました。
第1回目の対談は、『自家栽培麦工房ナチュ』の川村雅章さんとめぐみさんです。『ナチュ』は、北杜市高根町北割の畑と森に囲まれた自然豊かな場所にポツンとあります。『ナチュ』は、麦の栽培から製粉、パンの仕込みから焼成までを全て自分たちで行うパン屋さんです。
パン屋を始めるきっかけ
—はじめてお店に伺いましたが、八ヶ岳も甲斐駒ヶ岳も富士山も綺麗に見え、とても素敵な場所ですね。この土地に決めたのは理由はなんですか?
めぐみ 結婚前にこの辺にはよく遊びに来ていたんです。移住当初は明野の借家に住んでいたんですが、家を買おうってなった時にたまたま中古で買ったところがここだったんです。景色もすごくいいし、気に入っています。
—川村さんは小麦栽培から行っていると聞きました。八ヶ岳南麓は天然酵母や地産地消にこだわっているパン屋さんが多い中、小麦栽培から製粉、仕込みから焼成まで一貫してやっているのは珍しいと思います。移住してパン屋を始めるきっかけは何だったのですか?
雅章 はい、私が小麦を作り、妻がパンを作っています。パン屋を始めるきっかけは、妻がパン屋さんでアルバイトを始めた事でした。
めぐみ 最初は販売のアルバイトだったんですが、徐々に製造の方もやらせてもらえるようになってパン作りって面白いなって思ったんです。それでだんだんパン作りにハマっていきました。
—もともとパンとかお菓子作りに興味があったんですか?
めぐみ パン屋でバイトを始める前は特に興味があった訳ではないんです。十数年美容師をやっていました。
雅章 僕の専属美容師です!(笑)
—全く違う畑だったんですね!?
雅章 そうなんです(笑)。結婚してこっちに引っ越してきた当初も2人ともサラリーマンでした。それで奥さんがパン屋に勤め始めてから、何となくパン屋やりたいねという話をしていました。
めぐみ その頃ちょうど夫が脱サラして農業を始めたんです。それでせっかく野菜を作るなら小麦作ったらいいんじゃない?パンに使えるし!っていう軽い気持ちで始めました。
—私は今年移住してきたばかりなんですが、川村さんは移住とかお店をオープンするとき不安はなかったんですか?
雅章・めぐみ 特になかったですね。
めぐみ 移住してきたときも何も考えずに2人いればどうにかなるだろうというと思っていました。今も野菜作りだけじゃなくてバイトみたいなこともしてるんで。兼業農家ですね。
手探りで始めた小麦栽培
—雅章さんは何で農業をはじめようと思ったんですか?
雅章 もともと農業には興味があったんです。それでそっちの分野に行ってみようと思った時、ちょうどハローワークに農業の職業訓練があったんです。そのプログラムの中に小麦栽培は無かったんですが、自分でネットで調べて体験させてくれる場所が無いか調べたら、須玉の黒森地区というところで東京の大学生が1年を通して小麦の栽培をしてみませんか?という募集をしていたんです。それがちょうど農業を始めた1年目の年で、トータルで2年間参加しました。1年目の研修が終わった時点で自分で小麦を作り始めました。
—農業は自然との闘いですよね。小麦栽培で特に苦労したことはありますか?
雅章 農業の研修はしていたんですけど毎年毎年天気、気候が違うからほとんど自己流です(笑)1年目は小麦が全滅しかけました。1200坪のうち収穫できたのが90坪。台風が来て麦が倒れちゃって、それで病気がついて収穫できなかった。それが1年目からでキツかったです。
—1年目から洗礼を受けたんですね。
雅章 そうなんです。次にキツかったのが今年。長雨でずっと収穫が出来なくて半分無理やり収穫しました。あまり雨が続くと麦が湿気っちゃうから小麦から芽が出てきちゃうんです。今年もちょっと出ちゃったんだけど、それでも何とか収穫できました。
—小麦栽培の体験も行っているんですよね?
雅章 はい!今年は中止なっちゃいましたけど、麦踏とか刈り取り体験もやってますよ。村瀬さんもぜひ参加してみてください!
—毎年小麦の性質が違う中、めぐみさんが小麦に合わせたパン作りをするんですよね?
めぐみ そうです、毎年小麦の中の水分量とかも違うので難しいです。特に今年は調整するのが大変でした!旦那様がなんとかやってとパスしてきました(笑)
—小麦は色々な種類を作っているんですか?
雅章 はい、色々な他にはないよう小麦を作っています。山梨は『ゆめかおり』を推奨しているんですよ。他には北海道の『春よ来い』、中力粉は南部小麦、薄力は『ゆきはるか』、スペルト小麦(古代小麦)、今年は『北の香り』の種も手に入れたので来年はもっと広げようかなと。『キタノカオリ』は美味しいらしいですね!
—『キタノカオリ』は作るのが難しいからやめていく農家さんが多いと聞きました。
雅章 そう、それでチャレンジしてみようかなと。知り合いのパン屋さんも『キタノカオリ』を使っているところが多いのでそれなら作ってみようと。知り合いから種をもらって一反歩くらい作ってみました。
—小麦と一言でいっても作り方とか性質は違うのですか?
雅章 はい、基本的な育て方は一緒ですけど収穫量、背丈、肥料のやり具合など全然ちがいます。
—麦の栽培は年に1回なんですか?
雅章 麦は年に2回撒きます。『春よ恋』は春撒き、その他は秋撒きです。10月後半から11月頭に秋撒きをします。ちょうど八ヶ岳ベーカーズが終わってからなんで良かったら是非いらして下さい!あとは今年は中止なっちゃいましたけど、麦踏とか刈り取りもありますので是非!
—はい!ぜひ参加してみたいです!刈り取りは手作業でやられているんですか?
雅章 機械でやっています。コンバインを使って。あと種蒔きも手で撒くこともしますが機械も使います。
—精米機を精麦機に改造したそうですね!
雅章 あ、Facebook見てくれたんですか?!あれはまだ試験段階なんですけどね。以前、部品加工の仕事をしていたこともあり、機械いじりが好きなので農機具は中古で買って自分で改造します。買うと4~50万くらいするので。造る方が安上がりがけど、ただなかなかうまくいかないんですけどね(笑)ちなみに、このお店も農作業の合間に約2年かけて作っちゃいました!
—店舗もセルフビルドだったんですね!器用なんですね!
小麦を活かしたパン作り
—めぐみさんは商品開発はどうやっているんですか?とても大変だと思いますが、何かインスピレーションとか湧いたりするんですか?
めぐみ そんな大したことはしていないです。野菜は基本的に旦那さんが作っているものを使っています。基本的に自分が美味しいと思うもの、作りたいものを作ります。でも、材料に余計なもの、混ぜ物などは極力入れたくないんです。見栄えを良くして色々のせるのはなるべく控えます。だからシンプルなパンばかりになっちゃうんですよね。うちは小麦を作っているので、その小麦の味を生かしたいから余分なものは入れないんです。それがパンに対するこだわりかな。なんでも入れればいいというものでもないかなと。食パンは以前色々入れて作ってみたけど、なんか違うなと思ってやめたんです。それぞれのパンに相性ってありますよね、それが商品開発の難しい所だと思うんで。
—確かに!小麦から栽培しているのは、何よりの『ナチュ』の特徴ですからね。小麦の味を味わってもらえるパン作りを意識しているということですね。店舗での営業日が土曜日だけの理由はなんですか?
めぐみ もともと土日とか週3くらいの営業だったんです。日曜はイベントが重なることが多かったので土曜のみにしました。奥さんが製造から販売まで一人でやっていて、営業日は土曜だけですけどひまわり市場に出しているので他の曜日でも焼いているんです。あと通販もやっているから一人だと身体がもたないんです。身体が2つあればいいけど。。。
雅章 自分は全然作れないし。それだったら営業日は1日にしようと。
—それは大変ですね!朝は何時から仕込み始めるんですか?
めぐみ 朝は1時頃から仕込み始めます。機械とかそんなに大きくないんですよね。だから回転がよくなくて時間がかかっちゃうんです。クリームパンとかのフィリングも自家製なのでそうゆうのも作らないといけないし。
—フィリングもすべて手作りだからこそ、雅章さんの小麦に合うようにつくれるのですね。最後に今後の展望について教えてください。
めぐみ うーん、オープン当初から自分たちで小麦を作って焼いて販売をしてきたので、更により良いものを出していくことですかね。日によって難しいですが。。。まあ無理せずやっていきたいです!自分たちの出来る範囲で。こじんまりと、お金儲けっていうのはなくて、普通に生活ができればいいかなと。
—なるほど!自然と真正面から向き合うお二人の姿にとても刺激をもらいました。ベーカーズのイベントもよろしくお願いいたします。貴重なお話ありがとうございました!
【八ヶ岳ベーカーズ2020autumn】
日時:2020年10月11日(日) am10:00~pm15:00 ※売切れ次第終了
場所:萌木の村ひろば
入場料:無料
問い合わせ:0551-48-2521 (萌木の村ROCK)