《八ヶ岳ベーカーズ対談企画》韮崎の”週末”パン屋さん
—いえぱん実粉・ちかこさん

八ヶ岳のパン屋・焼き菓子屋が萌木の村に集結する『八ヶ岳ベーカーズ』。今年の秋は2020年10月11日(日)に行われます。イベント開催に向けて、出店するベーカーズおひとりおひとりを紹介する特集記事を毎週2回お届けします!

2回目の対談は、韮崎に店舗を構える『いえぱん実粉』のちかこさんです。韮崎駅、韮崎高校の近くにひっそり佇む週末だけ営業しているパン屋さんです。

作り手のちかこさん

ーはじめまして。お店に併設されたショーケースカウンターがとても素敵ですね!ちかこさんは韮崎の方なんですか?

ちかこ いいえ、主人の仕事の関係で山梨に移り住んだんです。このお店も山梨に来て10年以上経ってからオープンしました。

ー2016年にお店をオープンされたと伺いましたが、オープンの準備にどれくらい期間がかかりましたか?

ちかこ オープンしようと思ってからの準備は1~1年半くらいなんですけど、その前段階がかなり長かったんです。子どもが小さい時からパンを作って食べさせていたんですが、パン屋を始めたのはその延長だった。だけど、始めは老後というか、子どもが大きくなってからやろうと思ってたんだけどね。たまたま話をもらったので。

—準備段階の時、試作とか機械の調達とかはどうしたんですか?

ちかこ 試作は子どもが小さい時からずっとやってます。粉の配合を変えて作ったパンを、子どもに食べさせてみたりとか、こんな生地にこんなものを入れたらどうなるかなっていうのを実験的にやってたんです。あとはこの粉とこの粉を合わせた時とこの粉とこの粉を合わせたのはどっちが美味しいかなっていうのをずっとやっていたの。お店を開く前からAとBとCを並べてどれが一番美味しいと思う?って子どもたちに聞いたりしてました。それは趣味の延長みたいな感じなんだけど、作り溜めていたレシピとかそういうのをもとにお店を開いたの。お店を出そうと思ってからお店の雰囲気とか、商品とか考えていたけど決して1年半前に0から考えたわけではなくて、もともとのベースはあったんです。

—なるほど。お子さまが審査員だったんですね!趣味の延長ということは、学校で勉強したり、パン屋さんで働いた経験はなかったということですか?

ちかこ はい。パン作りは独学でやってたの。それで上手くいかないと調べてみたり。。

ーそもそもパン作りを始めるきっかけは何だったんですか?

ちかこ 子どもがパンが大好きだったのよ。それで、そんなにパンが好きだったら安全なもので沢山食べさせてあげたいなって思ったのが最初です。長男が特にカレーパンが好きだったから、中の具材も自分で作ったら安心だと思って。生地も何入ってるんだろって思うよりは自分で作れば安心ですよね。自分で作れれば沢山食べさせてあげらるし。なのでそれがきっかけですね。

ー果物や中のフィリングとか、ジャムも販売していますが全て自家製なんですか?

ちかこ そうですね、今お店にあるあんこも自分て炊いてますし、ピールとかも自分で作ります。

6月に販売していた梅ジャム。左が青い梅、右が完熟したもの。自家製のジャムも店頭で販売している。(写真は「いえぱん実粉」Facebookページより参照)

—フィリングから自分で作るとなると、かなりの時間を要しますよね。お一人でやっていて、そういった時間はどうやって作ってるんですか?

ちかこ 全部自分で作るとなると、どうしても週末のパン屋さんになってしまうんですよね。平日の他の日は、今だとドライトマトを自分で作ったり、バジルソースを一年分仕込んだりとかちょっとずつ仕込んでます。

—いえぱんさんの看板商品といえば厚焼きシリーズではないでしょうか。どうやって生まれたんですか?

ちかこ そうですね、生地はイングリッシュマフィンで、中の具材を色々変えて季節食材を使ったり、定番商品もあるんですけど、その時期その時期採れるものを具材に入れてます。私小麦の香りがするパンが好きなんです。菓子パンで色々入れるのも美味しいんだけど、私はシンプルなパンの生地に具を入れたかったのでこんな形になりましたあとは具材もたっぷり入れてあるので、それなりに満足できるようなものにしたかったんです。

厚切りシリーズ。季節ごとにフィリングが変わり、ファンの多い看板商品。(写真は「いえぱん実粉」Facebookページより参照)

—基本的にはお店の商品はすべて、お子さまが安心安全に食べれるものという考えで作られているのですか?また、いえぱんさんにパンを買いに来る方も同じ思いのお客さんも多いんですか?

ちかこ そうですね、そういうお客さんもいらっしゃいますね、だけどそれだけではなくて、例えば私もパンが余れば自分の子どもも食べるので、安心安全は基本にあります。でも柔らかいパンが好きな方もいればセミハードなパンが好きな方もいらっしゃるのでなるべく種類は多く作るように心掛けてはいます。

 ーそうなんですね。正直、お店の大きさからはイメージ出来ないほどの種類の豊富さです!商品開発は定期的に行っているんですか?その中で苦労することはありますか?

ちかこ はい、季節毎のものですね。例えば厚焼きシリーズも、秋だから渋皮煮を作るのでそれを具材にして入れてみたりとか、今もカボチャがだんだん甘くなってきたのでカボチャ出してみようかなとか。でも思った味にならない時とかいっぱいあるし、何回も試作してるとだんだん迷っちゃうんですよね。あれ?!最初の味はどんなんだったかな?とか(笑)

—わかります。思い通りにいかないと迷宮入りしちゃうことあります。そんなとき最終的に味はご自身でで決めるんですか?

ちかこ いいえ、子どもたちに食べてもらって、子どもたちが忖度なく美味しいって言ってくれた時は「よしっ!」って思います。けど、「う~ん・・・」て言われたときは、あーまだなんだなってもう1度再チャレンジしすま。

—なるほど、じゃあお子さんたちは一番のお客さんなんですね。

ちかこ そうですね、厳しい目でジャッジしてくれるので!

「いえぱん実粉」さんのパンの数々

—朝は何時に起きて作り始めるんですか?

ちかこ 2時頃に起きて、生地自体は低温長時間発酵なので前日に第一段階は終わらせていて、第二段階は当日の朝から始めます。それでオープンに間に合わせます。でも子どもに迷惑を掛けちゃってる感じですね。2時に起きるってなると早く寝ちゃうんですよね。営業日だけじゃなくて2、3日前から色々仕込み始めるでしょ。そうするとどうしても子どもは遅くまで起きていて、私は早く寝ちゃうし。。朝も早いから子ども達の生活サイクルとちょっとズレちゃうんですよね。

—パン屋さんあるあるですね。。。ちなみに、パン作りが最初は趣味から始まったと仰ってましたが、パン以外の事をやろうと思ったことはないんですか?

ちかこ 今までパン以外の事をやってたんですよ、全く違う事を。ダブルワークだったんですけどこっちにシフトしたんです。パン作りが楽しかったのと、パンを作ってお客さんに美味しかったよって言ってもらえるのがすごく幸せだなと思ったの。

—好きなことを仕事にするって、もちろん大変のこともありますが、やりがいが大きいですよね。今後の展望はありますか?

ちかこ ゆっくりでもいいので、ずっと続けていけるように試行錯誤していきたいですね。

—八ヶ岳ベーカーズ以外にも他のイベントに出店したりしますか?

ちかこ してますよ。お店が週末の営業だけなので、なるべく色々なお客さんにこんなパン屋もあったんだってちょっとずつ知ってもらいたいなと思って。コロナの前は2,3か月に一回とかイベントに出るようにしていました。

八ヶ岳ベーカーズ2019秋の出店の様子。娘さんと一緒に販売していました。

—そうなんですね。八ヶ岳ベーカーズと他のイベントの違いってありますか?

ちかこ 八ヶ岳ベーカーズの良いところは、すごくアットホームな感じがして私は好きなんですよね。ギスギスしてないと言うか。最近は『自家栽培麦工房ナチュ』さんのところに小麦を買いに行かせてもらっています。八ヶ岳ベーカーズで出会うまでは知らなかったんですけど、小麦を作ってるって知って、じゃあ買いに行ってみたいなって。八ヶ岳ベーカーズに参加すると色んなお店との繋がりが出来るし、雰囲気もとっても良いんで、私自身も参加させてもらって楽しんでます。でもパン屋さんだらけなんで少しドキドキするんですよね(笑)

―「作り手同士の交流の場」は八ヶ岳ベーカーズの目的の一つでもあるので、このお話を聞けてよかったです!今回の八ヶ岳ベーカーズもよろしくお願いします。

【八ヶ岳ベーカーズ2020autumn】
日時:2020年10月11日(日) am10:00~pm15:00 ※売切れ次第終了

場所:萌木の村ひろば

入場料:無料

問い合わせ:0551-48-2521 (萌木の村ROCK)

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