「どうしてかわからないけど、別のところで働こうと思ったことはないんです
——卒業直前!4年間ROCKで働いた大学生スタッフ・森澤友貴

もうすぐ4月。新生活をスタートさせる人も多い時期を迎えます。ROCKで働くスタッフにも、新しい門出を迎える人がいます。

ホールスタッフ・森澤友貴もそのひとりです。

山梨県立大学の看護学部に通っていた彼女は、この春卒業。看護師として働きはじめます。

大学1年生のころからROCKで働きはじめ、今年でほぼ4年。実はROCKでもベテランといえるスタッフでもあるんです。

今回は卒業目前の彼女に改めて話を聞きました。ちなみに、最終出勤は3月29日ですよ!

バイトをはじめてすぐに起こった火事

——森澤さんはこの3月でROCKを卒業するそうですね。

はい。大学を卒業して就職するので。

——ROCKでのバイトはかなり長かったと聞いてます。ほぼ4年まるまる働いていたと。

森澤友貴。

そうです。脇道に逸れたり、休み休みだったりもしましたが、バイトの基本はずっとここでした。

——働きはじめたきっかけは何だったんですか?

地元出身なのでROCKのことは知ってはいました。ただ、たまに食べに来るって感じでそれほど強い思い入れがあったわけではないんです。働きはじめるきっかけとしても、大学生になってアルバイトをはじめるとき、最初は家庭教師なんかもやっていたんですけど、いろいろやりたいと思って。「飲食店みたいな接客業もやりたいな」って話していたら、母がたまたまROCKの本部で働いていた方と知り合いで、「じゃあ面接に来たら?」という話になったんです。

——最初に入ったのはいつごろ?

大学1年生の6月に面接を受けて、7月から働きはじめました。

——そうすると2016年の初夏……あれ? じゃあ、もしかして働きはじめてすぐROCKが火事に……?

そうなんです。1か月もしないうちに火事になっちゃって。あの日は、朝友だちから「ニュースになってたよ」って聞いて知って、びっくりしました。まさかの全焼。悲しかったです。

——火事のあとってバイトはどうなったんですか?

前から働いていた人たちは瓦礫の片付けをやったり、店舗前でのカレーの販売をやったりしていたんですけど、私はそのときまだ入ったばかりだったので、「どうしたい?」って聞かれて。「できればこの近くでバイトは続けたい」っていったら、(同じ萌木の村にある)メリーゴーラウンドカフェを紹介してくれたんです。それで、ROCKが再開することになったら戻ってくるという約束付きで、そっちでバイトすることになりました。

——え、じゃあ、入ってけっこうすぐメリーゴーラウンドカフェに?

そうなんです。(翌年6月の)ROCKのグランドオープンには戻ってきていたので……5月くらいまでですかね? 半年以上メリーゴーラウンドカフェで働いていました。

——いきなりそんなことになったら、「別のところでバイトしよう」ってなってもおかしくない気がするんですが。

なんでですかね?(笑) 別のところで働こうとは全然思わなかったです。自分でもわからないんですけど、「ROCKでアルバイトする」って決めていた。お店自体も「近所にあるちょっとオシャレなお店」くらいのイメージだったので、特にすごく思い入れがあったわけじゃないですし……。確かに今思うと、ほかにどこか探しててもよかったのに、そうは思わなかったんですよね。

——なんだかふしぎですね。

本当、なんでなんですかね(笑)。

ROCKの自由な雰囲気は変わらない

——働きはじめてすぐ間が開いちゃっているので「最初の印象」ってなかなか難しい気もしますが、働きはじめたころはどう感じてましたか?

最初のころは正直憂鬱でしたね(笑)。飲食業自体初めてだったんですけど、「お客さんってこんなに来るんだ」って。

——入ってすぐ繁忙期の夏ですもんね。

いきなりオーダリング(オーダー用端末)持たされて、「どうしよう?」ってなりました(笑)。

——火事の前とあとで、お店の印象は変わりましたか?

リニューアルでお店自体はやっぱりきれいになりましたよね。火事の前は、いい意味で年季が入っている感じで、建物としてもアットホームさがすごかったです(笑)。今よりちょっと薄暗い感じだったのかな? そういう雰囲気も好きでした。今はきれいで、どちらかというときっちりした印象の建物になったなって感じてます。何だろう? 柔らかい長方形がきっちりした長方形になった、みたいなイメージですね。

——スタッフやチームの雰囲気はどうでしょう?

スタッフも統一感が出たかなって思います。今はマニュアルなんかもできて、基本的な部分がかっちりしたなって。でも、雰囲気自体は変わらないんじゃないですかね。いい意味で自由なお店という印象は今も変わりません。髪の長さや色で何か言われたこともないですし、爪も……私今、ネイルやってるんですけど、それも何か言われたことないんです。

——髪色なんかも厳しいところはすごく厳しいですよね。

(別のところで働いている)友だちなんかはいろいろいわれたようで、心配されたりもしました(笑)。実際、ネイルなんかはお店はともかく「お客さんに何かいわれたら」って心配はあったんですが、お客さんも「きれいだね!」とかっていってくれるので、自由にやらせてもらってきました。

——本当にきれいですね。凝ってる。

これ、秋帆さん(ROCKのスタッフでネイルサロンも開いている高野尾秋帆)にやってもらってるんです。

——絵の入っているやつは、下地を塗って、絵を描いて、さらに上からコーティングしてるんですかね?

そうです。全部秋帆さんの手描きなんですよ。一度別のネイルサロンに浮気したこともあるんですけど、秋帆さんのネイルってすごく持ちがいいんです。ROCKでけっこうがちゃがちゃいろんなことをしても全然剥がれない。

——その辺も含めて自由に楽しんでこれたわけですね。

はい。シフトに関してもすごく融通をきかせてもらえたので、助かりました。

——休みを取った時期もあったっていってましたもんね。

普段は週2〜3回、GWやお盆なんかにはガツッと入ったりもしましたけど、休むときは2〜3か月一気に休んだりもしてたんです。それも「いいよいいよ」っていってくれて。けっこうワガママきいてもらっていました。

テニサーだと思って入ったら部活だった、大学時代

——休む時期は何をしてたんですか?

私、山梨県立大学の看護学部なんです。だから、実習とかテストがけっこうあって、そういう時期はまとめてお休みしてました。あと、冬はスキーをやったり。

——スキー好きなんですか?

小学生からずっとアルペンスキーをやってるんです。

——アルペンですか。

はい。マイナー競技なんですが(笑)。旗門の間を通ってどれだけ速くゴールするかを競う競技です。親が温泉とか旅行が好きで、「いっしょに滑れればいい」って感じでスキースクールに入れたら、私が楽しくなっちゃったみたいで。レースに出たら、意外といい成績が取れちゃって、それが嬉しくてますます「楽しい!楽しい!」ってなっていった感じです。

——じゃあ、けっこう大会にも出てた?

一応国体なんかにも出てます。今年は看護師の国試とかぶってしまったので諦めましたが、去年まではずっと。

アルペン選手として国体などの大会に出場していました。

——すごいじゃないですか。

競技人口も少ないんで……(笑)。実力的にもやっぱり限界は感じるようになって、「これで食べてはいけないな」と思って、今は趣味として続けている感じです。

——アルペンって選手生命というか、年齢的にはどれくらいまで楽しめるものなんですか?

やる人は60歳、70歳になってもやっていますよ。マスターズもありますし。種目にもよりますが、トップクラスの選手も40歳手前くらいの人も多かったりします。

——身体能力はもちろん必要でしょうけど、どちらかというと技術面が重要な競技なんですね。

そうですね。ある程度体力があれば、経験値の勝負になってきます。

——じゃあ、アルペンの世界ではまだまだ若手という世代なんですね。

はい。赤ちゃんみたいなもんです(笑)。

——じゃあ、大会なんかの時期もお休みを。

はい。あと、夏はテニスもやっていたので。

——テニスも! スポーツ好きなんですね。

テニスはもともとスキーのオフトレ(オフシーズンのトレーニング)ではじめたんです。それも楽しくなっちゃって、中高と続けていた。途中で何かを辞めるのがイヤなので、大学でも何らかの形で続けたいなって思ってサークルに入ったんですけど、意外と大会なんかにも参加するしっかりしたところだなって思ってたんです。そうしたら、先輩に「バカ、これ(サークルじゃなくて)部活だぞ!」っていわれて(笑)。

——(笑)。いわゆる体育会系ですね。サークルと部活じゃ全然違いますよね。

「だからこんなに大会とか出てたんだ」って(笑)。それはそれで楽しかったのでよかったですが。

一瞬、ROCKに就職しようかなって考えました(笑)

——卒業後は看護師ですか?

はい。山梨県立中央病院で働きます。

——看護師になろうと思ったきっかけは何だったんですか?

親に「ひとりでも生きているように自立しなさい」っていわれていて、そうなるとどういう仕事がいいんだろうなって考えてたんです。そうすると、手に職を付けるのがいいな、と。医者とか看護師、弁護士かなって考えたんです。でも、弁護士は県内だけで学ぶのも大変そうで。県内の国公立で学べるものって考えると、「なら看護師かな」ということで決めましいた。看護師は不足していますし。

——めちゃくちゃしっかりしてますね……!

いや(笑)。基本はアホです。

——じゃあ、いよいよROCKでのアルバイトももう少しで終わりですね。

もう、寂しいです!

——最終出勤はいつなんですか?

3月29日です。寂しいのでギリギリまでシフト入れました(笑)。

——4年ですもんね。同じバイト先に4年ってなかなかないと思います。

そうですね。周りの友だちはやっぱりけっこうバイト先変えていました。

——飽きたりもしますしね。

私は、飽きたりはしなかったですね。忙しい時期とすごく暇な時期は憂鬱だったりはしましたけど(笑)、けっこう毎日楽しかったです。働きに来ているってよりみんなと話をしに来るって感覚でしたね。

——スタッフ同士で?

いや、お客さんも含めてですね。ベテランスタッフさんって常連のお客さんと仲がよかったりするじゃないですか。立岩さんとかがよく常連さんと話しているのを見て、「いいなー」って思ってたんです。私も働いているうちに常連さんとお話するようになって、「あ、今日いるじゃん」なんていわれると嬉しかったです(笑)。

——ROCKはお客さんもフレンドリーな方が多いですよね。

そうですね。「おいしいね」「量多いね」なんて声をかけてくれる方も多いです。「量多いね」は、本当によくありますね。あと、ときどきカレーにアイスプラントって野菜が乗ってるんですけど、「これ何?」って聞かれたり。「へー、何科の植物なの?」って聞かれて、「聞いてきます!」って菊さん(ROCKのシェフ)のところに行ったりしてました。ファミレスとかではそういうふうに話しかけられることってあんまりないじゃないですか。それが楽しかったですね。

——スタッフ同士でもよく遊びましたか?

遊びました。同世代も多いですし、上の世代の人とも飲みに行ったり、遊びに行ったり……立岩さんとかよくごはんに行きましたし、菊さんとも飲みに行ったりしたし。だいたいみんなと飲みに行った気がします。

——飲食自体もそうですが、お店に合っていたんですね、きっと。

だと思います。よくこんなに続きましたよね(笑)。でも、辞めようと思ったことは一度もないです。なんでかわからないですけど。みんなはどう思ってるかわかんないですけど、私はみんなのことすごく好きです。だから、辞めるのがすごく寂しいです。「もう清里の方で働けないんだ」って。このお店がなくなったら泣くと思います。実は一瞬だけ「ROCKに就職しようかな」って考えたこともあるんです(笑)。

——せっかく看護師の資格まで取って?(笑)

一瞬ですけどね(笑)。それくらい寂しい。就職したら副業はできないので、働けないですけど、本当は休みの日とか働きたいくらいです。

ドクターヘリや発展途上国でも働きたい

——4月からはお客さんとして、ですね。働いているときもお客さんとして来たりしていましたか?

来ました、来ました。今日も食べて帰ります。

——お気に入りのメニューってありますか?

ビールならヴァイスが一番好きです。ファーストダウンほどじゃないですけど軽めで、清里ラガーをフルーツ寄りにした感じですね。料理は、やっぱりカレーですね。まかないでもカレー食べちゃいます。

——まかないで食べても、まだ食べたくなるものですか?

食べちゃいますね(笑)。なんか、飽きないです。

——ちなみに、これからの夢や目標ってありますか?

まずは普通に働けるように頑張ることですが、県中央病院ってドクターヘリがあるんです。山での遭難とか、車が入っていけないところに飛んでいく医療ヘリですね。私は山で育ったので、ドクターヘリで働ける資格を取って山で働けたらなって思っています。

——いわゆる救急医療ですね。

大学の研究でも救急をやっていたんです。外傷とか急性期(病気などの症状が急激に現れる時期)に関心があって。ドクターヘリは外傷の救急の第一歩なので、そういうところに行けたらなと思っています。あと、留学もしたいんです。

——留学ですか。それはどの辺に?

南アフリカとか発展途上国の方で看護師として働いてみたくて。医療設備が整っていない場所では、外傷や急性期の看護が求められるし、知識や経験を活かせるかなと思うので。

——単純に「手に職を付ける」ってだけじゃなくて、それを活かしたいという気持ちが強いんですね。

持ってるものはフルに活かしたいですね。もったいないなって思っちゃう。

——南アフリカに行ってしまったら、ROCKにはなかなか来られませんね(笑)。

そうですね(笑)。でも、きっと楽しいと思います。やりたいことはいっぱいあるので、着実にやっていきたいですね。

——これからの活躍も楽しみです。頑張ってください! それと、最後の出勤も!

前の投稿
「入りづらいというのはバーが居心地のい…
戻る
次の投稿
「世界に通用する甲州ワインにするために…

ROCK MAGAZINE ROCK MAGAZINE