「カレーをつくるときはハーブを買いに東京まで」
カンボジア出身シェフ・ヒエップ入魂のカレーバイキング、直前インタビュー

「ROCKといったらビールとカレー」というイメージを持っている人も多いと思います。もちろんこのふたつはROCKの看板。ですが、それを含めてROCKの料理を支える厨房には、個性豊かなスタッフが揃っています。

そんな個性を感じてもらえる機会のひとつが、11月26日から始まるカレーバイキングです。カレーバイキング自体はこれまでも何度か行ってきましたが、今回はROCKの定番カレーに加えて、本格派のアジアンカレー4種類がバイキングに並びます。

中心になっているのはカンボジア出身のシェフであるヒエップ。彼がいるから今回のカレーバイキングもできたようなものなんです。

そんなヒエップさんにカレーバイキングについて話を聞きました!

カンボジアから奥さんの故郷・日本へ

——ヒエップさんはカンボジア出身ということなんですが、日本に来たきっかけは何だったんですか?

ROCKシェフ・ヒエップ。

奥さんが日本人なんです。彼女はもともと旅行でカンボジアに来ていたんですが、何回か来ているうちにそこで働きたくなったそうで、日本語学校の先生をやっていました。そのときに知り合って結婚したんです。そのときは日本に来るつもりはなかったんですけど、子どもが生まれて、学校に通う年になったときに、どこの学校に行かせようかと考えて。カンボジアのインターナショナルスクールもいいかなと思ったんですけど、あのあたりのインターナショナルスクールはアメリカ人なんかはあまりいなくて、アジア圏の人が多い。それではあんまり意味がないかなと思って、なら彼女の母国である日本に帰ろう、と。

——奥さんは山梨県の人だったんですか?

いえ、東京出身でした。なので、そのときは首都圏に住んでいたんですけど、住み始めて5〜6年経ったころに3.11の地震が起きて。いろんな不安もあって、移住することにしたんです。山梨県は首都圏からも近いし、ちょうどいいということでこの辺に来ました。

——ヒエップさんはずっと料理をやってたんですか?

カンボジアでは専門学校でフレンチを中心に勉強していました。そのあと向こうのホテルでフレンチをやっていて、日本に来てからはフレンチのほかに、イタリアンや和食なんかもやりました。

——ROCKに来たのはいつ頃なんですか?

1年くらい前です。山梨に来て初めは別のところで働いていました。そこも入ったときはいいシェフがいて、料理もいろいろつくっていたんですけど、途中で上の人が変わっちゃったんです。それでコスト面、特に人件費に厳しくなっていった。結果として食材がほとんどカット済みの冷凍物になっちゃったんです。冷凍もよくなっていますけど、茄子やぶどうなんかは冷凍だとやっぱりブヨブヨになってしまう。厨房の人間はやっぱりできるだけおいしいものを食べてもらいたいと思ってるわけです。お客さんにどこの野菜を使っているかって聞かれても、嘘は言えないから「冷凍です」って答えないといけない。せっかく来てくれたお客さんにそう答えるのはやっぱりね……。

——確かに言いづらいですよね。


しかも、フレッシュ(生)の食材がないし、処理も終わったものばかりだから、包丁を全然使わなくなって。包丁を部屋にしまっちゃったくらいです。私は料理の経験があるから、包丁は使えるし、使わないなら使わなくてもいいといえばいい。でも、若い人がそこで働いていたら、包丁の使い方が身につかない。ほかに移るってなっても「何をやってたの?」ってことになっちゃう。それに、やっぱりつまらないんです。

——ROCKは基本的にフレッシュの素材を使うし、料理はほぼ厨房でイチから料理してますよね。

そう。だから、楽しいですね。

カンボジアやタイは料理のベースが同じ

——今回のカレーバイキングはヒエップさんがかなり気合いを入れて準備していると聞いています。

今回はグリーンカレー、レッドカレー、イエローカレー、ホワイトカレーの4種類を用意しています。あと、ハヤシライスなんかも出せたらって。カレー自体を複数種類用意するバイキングはROCKでは初めてなので、どれくらいの量を用意しておけばいいのかわからない部分もあるんですが、仕込みとか準備はちょっとずつはじめています。

カレーバイキングに登場予定のグリーンカレー(左)とレッドカレー(右)。

——カレーというとインドやタイっていうイメージがあるんですが、カンボジアでもポピュラーなんですか?

はい。タイ、カンボジア、ラオスあたりって食べ物はそんなに変わらないんです。カンボジアのものはタイのものを、タイのものはカンボジアのものをお互いに真似したりしてできている。

——近い地域だから根本はいっしょなんですね。

そう、いっしょです。ただ、地域によって少しアレンジが違う。たとえばタイなんかはとにかく何でも辛くしますが、カンボジアだとそれほど辛いものが好きな人が多くないのでマイルドにすることが多いです。辛い素材は外して、その分別のハーブを入れたりって感じですね。

——「お雑煮やお味噌汁が地域でちょっとずつ違う」みたいな感覚に近いですね。

そうそう。今回はグリーンカレーは辛めに、レッドカレーは中辛、イエローカレーとホワイトカレーは甘口にしようと思ってます。

炒めたタマネギなどの野菜にベース、スパイスなどを加えてつくっていきます。

——さっそくレッドカレーをちょっといただいてみたんですけど、本当にスパイスの存在感がありますね。口に入れると最初はタマネギの甘さがあるんですけど、あと引くホットさがある。

スパイスやハーブでいろいろアレンジしています。もともとカンボジアなんかではカレー粉ってないので、スパイス、ハーブをみんな調合してアレンジしてるんです。ただ、日本だと手に入りにくいものがけっこうあるんですよね。特にフレッシュハーブはなかなか量が確保できない。スパイスやドライハーブはそれなりにあるんですけど。

——カレーはスパイスやハーブの確保が大変だと聞きます。安定して大量に入手しづらいからチェーン展開するお店があまり多くない、と。

そうなんです。たくさん用意するのが大変なんですよね。種類もカンボジアなんかだとたくさんあるけど、このあたりでは確保が難しものもあって。たとえばレモングラスとかカフィア・ライムっていうライムの葉っぱなんかはこのあたりだとなかなか売っていない。私も自宅でカレーをつくるときは首都圏の業務用スーパーまでハーブやスパイスを買いに行ったりしてます(笑)。

——ヒエップさんがカンボジアでつくっていたレシピなんかをベースにしてるんですね。

そうですね。手に入らないハーブなんかもあるので、別のハーブにしてアレンジしたりしてます。

——ちなみに……アジアンカレーを食べていていつも悩むんですけど、入ってるハーブとかって食べていいんですか?

お皿に入っているものは基本食べられますよ(笑)。でも、好き嫌いがあるので、嫌いなら避けてくれれば。

カンボジアで定番のバゲットや麺と合わせる食べ方も!

——(レッドカレーを食べながら)あ、これサツマイモが入ってるんですね。

向こうではあんまりジャガイモって使わないんですよ。だいたいサツマイモ。タマネギ、サツマイモ、茄子なんかが定番です。

——スパイシーなルーにサツマイモが合いますね。

甘い、辛いって感じでおいしいですよね。うちの奥さんも「カレーにはサツマイモ!」って感じで、家でつくるときは絶対に入れています。ROCKのカレーやハヤシライスはビーフがベースなので、こちらは野菜やシーフードを中心にしたカレーにしてます。

今回のカレーでも野菜やハーブなどがいろいろ!

——今回はカレー自体も複数ありますけど、いっしょに食べるものもいろいろ用意するんですよね。

ごはんは白米と雑穀米。それと、バゲットを出そうと思ってます。

——バゲットですか。ナンとかではなくて?

ナンはインドの方の食べ物なんですよね。カンボジアではあまり食べなくて、バゲットが多いんです。カリカリに焼いたバゲットをゆるめのカレーに付けて食べる。おいしいですよ。

——あと、変化球が山梨県の地域食・ほうとうですね。うどんよりさらに太い麺ですよね。

カンボジアの方では麺も人気なんですよ。米粉の麺なんですけど、フォーよりもっと細い、そうめんみたいな麺にカレーをかけて混ぜて食べるんです。

——あー、おいしそう! 汁なし担々麺とかジャージャー麺みたいな感じですね。食べるのが楽しみです。

そのほかのメニューもいろいろ相談してます。料理長の菊さんもディナータイム用にいろいろつくろうとしてますし。

——豪勢ですね。始まるの、楽しみにしてます!

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