ROCKのメニュー冊子は個性的。レストランでよく見かける料理の写真と料理名中心のメニュー表とは違い、特集記事が掲載されているなどフリーペーパーのような仕上がり。記念に持ち帰ることもできる。こうしたメニュー表は、ROCKのスタッフなどが制作している。清水まりあは、メニュー表制作に携わるスタッフのひとり。彼女は、普段ホールや厨房に立つことはなく、事務所でROCKのメニュー表の他に萌木の村内の案内看板などを制作している。そんな彼女に、ROCKに来た経緯やROCKの好きなところなどを伺った。
ROCKでデザイナーになるまで
―どのような経緯でROCKで働き始めたのですか?
高校生の時に、清里駅前にあるMore Than Cafeというカフェでアルバイトをしていたんです。そのカフェが、清里フィールドバレエに出店してたんです。私も出店のお手伝いをしていたのですが、そこにROCK総支配人の三上さんが遊びに来て、三上さんと接点ができた。その縁があってROCKで働くことになりました。ROCKでは、デザイナーとして働いています。
―縁によってROCKで働くようになったんですね。東京などの都市部の方がデザインの仕事は多そうなイメージですが、都市部で就職しようと思わなかったのですか?
東京の専門学校に行っていたこともあり、最初は東京で就職しようと思っていたんです。でも、東京は人が多すぎているだけで疲れてしまう。安心できる場所がなかったんです。それからゴキブリが嫌でした。東京で暮らしていたときに生まれて初めてゴキブリを見ましたね(笑)。そうしたこともあって山梨県で働こうと思っていました。
ただ、企業説明会に行って履歴書を書いてという就職活動が大変で、面倒で、嫌すぎて何もしなかったんです。卒業間近の12月か1月になって、「さすがにやばい」と思って、三上さんに連絡を取って「山梨県でデザイン関係で就職できるところはないですか」って相談したら、三上さんから萌木の村に誘われてROCKで働くようになりました。
―働く場所の生活環境って大事ですよね。東京の専門学校でデザインの勉強をされていたということは、子どものころからデザイナー志望だったのですか?
子どものころは絵を描くのは好きでしたが、デザイナーになろうとは思っていなかったんです。
高校生の時、自分の進路を考えたら漠然と事務仕事は嫌だなあと思っていました。それで、高校の指定校推薦で入学できる美術関係の専門学校を探していたら御茶の水美術専門学校デザインアート科というところが唯一あって、そこに行こうと思ったんです。
―専門学校ではどのようなことを学ばれたんですか?表現技法とかなんでしょうか?
表現技法の基本はやりましたが、メインは企業や自治体から課題をいただいて、問題を分析してターゲットを絞って、それをどのようにデザインして解決していくかということでしたね。デザインと聞くと感覚的なイメージをもたれがちですが、段階を踏んで解決する論理的な感じでしたね。
専門学校でそういったことを学んだあとは、流れで今の仕事にたどり着きましたね。今まで流れでやってきた感じです。
―仕事を選んだ理由は、明確な理由もあれば些細なきっかけということもありますから、流れということは全然あると思います。ちなみに、子どものころから絵を描くのが好きということですが、どういうものを題材にしていたんですか?
小学生の頃はウエディングドレスを描くのが好きでした。なぜかは分からないんですけど(笑)。中学生の頃は漫画の模写もしていましたね。高校生の頃からは、口で説明するのが難しいんですが細かいものを描いていました。こんな感じです。(instagramの写真を見せていただく。ユーザーネーム:shimaria1999)
―すごい!なんていうんでしょうか。幾何学模様というか、イスラム美術のアラベスク模様みたいな感じですね。何かを参考にして描かれたんですか?
きっかけは授業が暇というか退屈でノートの端に描き始めたのがきっかけです。思いついたまま、模様をどうしようとか考えずに描いていました。むしろ、自分が日頃考えている思考を整理していて、絵のことは深く考えていませんでした。
―自分を見つめ直す坐禅に近いものを感じますね。
そうなんです。めっちゃ仏教だなと思います。
―高校生の時からそんな心境って、大人な高校生ですね(笑)。
当時は全然そんな風に思っていなかったですよ(笑)。専門学校の卒業制作の時、「自分のアートの意味について考えなさい。自分で定義をつけないとアートとは言えないから、なんで描いているのか考えなさい」って言われて。その時1ヶ月悩んだんですけど、たどり着いたのが仏教の坐禅とかの行為ですね。
ROCKでの仕事
―ここまでROCKで働き始めた経緯やデザインのお話を伺いました。ROCKや萌木の村での制作物について詳しく伺いたいのですが、何か挙げるとしたら何かありますか?
ROCKのメニュー表の表紙ですね。それから期間限定のメニュー表もデザインしました。
最初はROCKだけだったんですけど、だんだん萌木の村全体の制作物をやるようになりました。ホールオブホールズの入り口前に立っている案内看板だったり、萌木の村の紙のギフトカタログですね。カタログの方は、定期的に中身が変わるのでそれを差し替えたりしていますね。最初は八ヶ岳仕事人の方がやっていて、私はそのお手伝いぐらいだったんです。徐々に自分が受け持つようになって、今では自分が中心にやって、八ヶ岳仕事人の方に分からないことを教えていただくような感じになりました。
―いろいろやられているんですね。それだけ制作物に取りかかっているとROCKのホールに立つことはないのですか?
基本的にホールでお仕事することはないですね。ごくまれに出張のキッチンカーで人手が足りないときとかにお手伝いします。
―いろいろお仕事をされていますが、デザイナーとして今後こうしたいとかの目標はありますか?
流れで来ているので、全然明確なことはないですね。ただ、いずれフリーでやってみたいなと考えたりしています。実際、萌木の村のお仕事と並行して個人でやっている仕事もあります。
―個人でやっていることは、例えば何があるんですか?
八ヶ岳仕事人の方から紹介されて、北杜市の小中学生の子どもたちと作り上げるフリーペーパー「ほくとこ」っていうのをやっているんです。元々、静岡県沼津市から始まったコロマガプロジェクトっていうのがあって、その北杜市版です。この前、第1号が1000部発行されて北杜市内の施設で置かれているそうなんですけど、数が少ないので見かけたらレアです(笑)。
他には、北杜市明野町にあるフランス菓子のお店「ドゥ・ミール」のインスタグラムの運営をやっています。いずれも、人とのつながりや流れでお仕事をいただいていますね。
ROCKという場所
―フリーペーパー、読んでみたいですね。頑張って探してみます(笑)。話は変わりますが、ROCKで働いていてホールなどに立つことはあまりないと伺いましたが、清水さんから見て、ROCKのお店はどんな印象でしょうか?
「非日常」って感じです。今は新型コロナウイルスの影響でイベントができてないですけど、ROCKで開かれる音楽のイベントもすごいですし、楽しいことを求めている人が集まる感じだと思います。
―そうなんですね。ROCKのここが好きというところはありますか?
パワフルな感じや元気の良さですかね。あとは、ちょっとしたところに遊び心があるところ。お店に来てもらえれば分かるんですが、男子トイレに車の部品が置いてある。そういうところが面白いなと思う。特に良さん(舩木良)がやっていることが好きで、面白くて。魅力を感じます。
―例えば、どんなところがありますか?
今、ROCKのお店の前にラッピングカーがあるんですが、良さんのアイディアなんです。デザインは私がして、それを業者に頼んでつくってもらいました。完全にノリだと思いますね。あと、壊れちゃったと思うんですけど、食べ方が書かれた木のサイコロあったんです。今日は全て箸で食べるとか。全部遊んでいるみたいなのがうらやましいです。
あともう一つ好きなところとして、ROCKには珍しい車がたくさん来るのがいいなと思います。車は詳しいわけじゃないけど、車のデザインと乗り手のおしゃれさが好きです。この車に乗るためにこの格好って、車と人がマッチしているところが好きなんですよね。そういう人がよくROCKには来ている気がします。
―遊んでいるという部分では、別連載で、ROCKの歴代店長さんへのインタビューをやっています。その話の中で、昔は遊び心が多かった印象があります。例えば、舩木社長がカウンターで「サソリ」を使って驚かせたなんてエピソードがありました。普通の飲食店ではやらないようなことがありますね。
そういう昔のノリは好きです。「一生遊び心忘れねーぜ」っていう感じがありますよね。
―ご自身のデザインに生きてくる部分のところありますか?
やってみようと思うけどなかなか出てこない。完成させることに必死です(笑)。もうちょっと余裕が出てきたらいいなと思います。
―今後遊びのあるデザインができたらいいですね。今日はありがとうございました。