「10年前はこんな暮らししてると思ってなかったけど、今は何でもできるって感じます」
都内有名百貨店から山小屋、そしてROCKへ!スタッフ・徳丸未来

地元出身の人はもちろん、どこかから移住してきた人もたくさん働いているROCK。12月までホールで働いていた徳丸未来もそんなスタッフのひとりです。

1月から出産のためROCKを離れた彼女ですが、実は以前は都内有名百貨店のインフォメーションで働いていたんです。都会中の都会という職場から、一転して長野の山小屋へと転職し、その後ROCKへやってきました。

それまでとはまったく違うところへ行こうと思ったのはなんでなのか? 出産を控えた12月に話を聞きました。

自転車に乗れない人がハマった登山

——出産に向けて1月からお休みに入るそうですが、今(2019年12月時点)何か月なんですか?

8か月です。

——え、もうそんなに。妊娠してるっていわれないとわからないですね。

気付いてない人もいるかもしれないですね(笑)。サロン(エプロン)をしてるとあまり目立たないですし。

徳丸未来。

——じゃあ本当にもうすぐですね。

1月には青森の実家にいったん帰る予定です。

——実家は青森なんですね。

はい。大学で東京に出て、そのまま東京で就職しました。

——就職はどこに?

都内の有名百貨店に勤めていました。インフォメーションの担当で、エレベーターガールなんかもやってました。

——うわ、いわゆるお高いところですね! ちょっと近づきがたいというか(笑)。

開店の挨拶とかもしてましたよ。「お客様の方が気後れしちゃうんじゃないか」ってくらいズラッとスタッフが並んで……。

——あれが嬉しいという人もいれば、ちょっと気後れしちゃうって人もいますよね(笑)。でも、その当時から接客業だったんですね。

そうですね。接客が好きなんですが、商品を売るっていうのはちょっと苦手で。

——ああ、商品のご案内みたいなことはあまり。

そう。やっぱり迷っている方とかにオススメすることもあるじゃないですか。でも、乗り気じゃないのかな?って人に買ってもらうのも気後れしちゃう。

——じゃあ、インフォメーションはぴったりの職場だったわけですね。

プレッシャーもありましたけどね。絶対に間違えた情報をご案内しちゃいけないっていう。間違えちゃったときは、見つけるまで追いかけて「申し訳ございません!」って訂正したりしてました。

——ROCKが適当ってわけじゃないですけど、そういう職場からROCKっていうのはかなり接客スタイルにギャップがありますね(笑)。ここにはどういう経緯で?

30歳のときに都内百貨店を辞めて、長野県の山小屋で働きはじめたんです。

——山登りは好きだったんですか?

都内百貨店時代に目覚めたんです。私は小さいころから運動神経が悪くて、自転車も乗れないんです。でも、誘われて山に登ってみたら意外と楽しめて。いっしょに行ったみんなより疲れずに登れたのが自信になったんです。登山靴が気持ちよくて、どこまでも歩ける、自分が運動できる人になったような気持ちになって。この靴を履いてリュックを背負って歩くのが楽しいっていうところから始まって、ハマっていったんです。それで、30歳を機に思い切って山小屋で働いてみようと。

——なかなか思い切りましたね。

そうですね(笑)。都内百貨店時代の友だちからしたら「え? なんで」っていうような決断だったと思います。

——なんでしょう、東京の暮らしが合わなかったんですかね?

いや、東京も大好きでした。夜飲みに行ったりするのも好きでしたし。

——これは偏見ですけど、六本木あたりで遊んでそうですよね(笑)。

遊んでました(笑)。あと西麻布とか。まわりも受付嬢っていう「女性らしい女性」ばかりだったっていうのもあるんでしょうね。毎日ヒールを履いてたし、まわりの人たちがみんな持ってるからブランドものもほしくなった。そういうことにお金を使うのも好きだったんです。それもすごく楽しかったんですけど、「30歳になったし、もういいかな」って急に(笑)。

「毎日ヒール」からスッピンの生活に

——そういう生活から山小屋って、もう着るものからしてかなり違いますよね。

違いますね。だから、最初は似合わなかったです(笑)。山登りのときなんかもお化粧してたんですけど、どういうふうにお化粧すればいいのかわからなくて、顔と服装が合ってないなって違和感がありました。

——かなり生活も変わりますよね。

そうですね。でも「お化粧しなくていいんだ!」とか、何も気にしなくていいんだっていうのがすごくよかったです。まわりの目を気にしなくていいんです。毎日毎朝、同じ人たちと同じごはんを食べて、家族みたいに暮らしているじゃないですか。私はスッピンだし、10日お風呂にも入っていないけど、みんな入ってないし、恥ずかしいとか何もなくなって。

——山小屋ってどういう暮らしをしてるんですか?

私が働いていたのは北アルプスの山小屋です。ここは山小屋のなかではホテルに近いようなところで、大きくてきれいなところなんです。私も最初は山小屋ってどんな暮らしをするのか、いろいろ不安はあったんですけど、「ここなら大丈夫かな」と思って選びました。それでも山小屋なので、なんでも自分たちでイチからやらないといけない生活ですね。男の人は力仕事で、道をつくったり階段をつくったり。女性陣は針仕事したり、ひたすら掃除したりっていう暮らしでした。4月に小屋開けをするんですけど、そのときは小屋が雪に埋まってますから、掘り出すところからスタートします。

——北アルプスの山小屋ですもんね!

雪というより氷になっているので、まず男性陣が大きなのこぎりでひたすら雪をブロック状に切っていくんです。で、それを大きなビニール袋に詰めて持ってきて、女性陣はそれを厨房の釜で溶かしていく。そこからゴミを取り除いたりしてやっと飲料水ができたり、お風呂には入れるようになる。

——そういう暮らしも楽しかったわけですね。

よかったですね。夫ともそこで出会ったので、結婚してからいっしょに住み始めてもそれまでとギャップはなかったです。元から家族みたいに暮らしていたし、その延長線上という感じでした。

——山小屋で知り合ったんですね。

はい。年下で、大学を出て会社勤めの経験もなくそのまま山小屋で働きはじめた人でした。彼は山小屋でいろいろつくっているうちに、何かを生み出す仕事をやりたいってなって、ものづくりの仕事をしようと決めたんです。その仕事の関係で、北杜市に引っ越してきました。東京にいたら出会わなかったし、東京時代に知り合った人と結婚していたら、今全然違う生活をしていたでしょうね(笑)。

——ROCKで働くきっかけはなんだったんですか?

もともと働くところは探していたんですけど、ここに来たのはたまたまなんです。北杜市で知り合った友人が萌木の村で掃除をしている人で、その人が遊びに連れてきてくれたのが最初です。そのときはただ遊びに来てお茶していただけなんですけど、友人がROCKで三上さんに「彼女、今仕事探してるの」って話したら「じゃあ、うちで働きますか?」っていきなり。

——そんなつもりはなかったのに(笑)。

そうそう。だからどうやって断ろうかって考えてました(笑)。それで「でも私、引っ越してきたばかりで車もないので通えないです」って返事したんですけど、「じゃあ、車貸します」って言われて「え!?」って。「今日、乗って帰りますか?」ってくらいの勢いなんですよ。「そんなあっさり決められるものなの?」ってびっくりしたんですけど、「でも、車貸してもらえるならいいかな」って思っちゃったです(笑)。

——じゃあ、遊びに来て仕事が決まって帰ったですか。

「いつから働けますか?」「じゃあ土曜日から」って感じでした。運転もペーパードライバーだったんで、最初はドキドキしながら運転してましたね。気付くとあれからもう2年経ってました。

ヤギと大型犬、あと子どもがいたらOKかな

——ROCKで働いてみての印象は?

すごく自由度の高い職場だなって。前の職場(都内有名百貨店)はすごく堅かったし、接客スタイルややることもきっちり決められていたので、最初はROCKの自由さに不安になったりしましたね。でも、だんだん「これがROCKらしさなんだな」って思うようになりました。

——お客さんとの距離感も近いですよね。

お客さんも堅い接客を求める人でなく、フランクな雰囲気が好きな人が来てくれているんだろうなと思います。イベントなんかの日に働いていても、地元の人に愛されているなって感じます。あと、犬が好きなのでワンちゃん連れのお客さんがいっぱい来るのが嬉しかったです。「この犬種、見たことない!」って子もいたりして、地味に楽しんでました(笑)。

——都心と違ってこのあたりは大型犬も多いですもんね。

そうそう! あと、2回くらいヤギを連れてる人も見ました。私もヤギ飼いたいです。

——ヤギですか? ペットとして?

普通のヤギだと大きいんですけど、大人になっても大型犬くらいの大きさのミニヤギっていうのがいるらしいんです。だから今、ミニヤギ情報をいろんな人に聞いてます。

——ヤギ連れてるのも、似合いそうですね。

ヤギと大型犬と、あと子どもがいたらいいかなって、雑に考えてます(笑)。

——お子さんが生まれたあとはまた戻ってくる予定なんですか?

今はまだどうなるかわからないです。職場としてはすごく融通を利かせてもらえるので居心地もいいんですが、できるだけ子どもといっしょにいたいなって思っているので。だから、今度はお客さんとして遊びに来ると思います。

——やっぱりお客さんとしても来たくなりますか?

そうですね。料理が美味しくてボリュームがあるのももちろんですけど、いつ来ても開いてるし、大人数でも入れるじゃないですか。だから、東京から友だちが来たときなんかも重宝してるんです。

——このあたりでは遅くまで営業している方ですしね。

そうそう。なかなか夜ごはんを食べたり、お酒を飲めるところがないですもんね。ROCKならクラフトビールもあるし、北杜市らしさを感じてもらえる。私自身も気付いたらふとROCKのカレーを食べたくなったりするようになっていました。あと、ビールも大好きなので、子どもが生まれて飲めるようになるのが楽しみです。しこたま飲みに来たい(笑)。

——ちなみにROCKのビールはどれが好きですか?

季節商品のアルトが好きですね。レギュラーならデュンケル!

好みのデュンケルで乾杯!

——割と濃厚系が好みなんですね。

プライベートで来たら酔っ払って昼間とは違う顔をみんなに見られちゃうと思います(笑)。

——ちなみに、今後個人的にやりたいことってありますか?

子育てもですけど、最近新しいことを始めたいなって思って、金継ぎを習ってるんです。金継ぎってわかります?

——お茶碗とかの割れやヒビをお茶碗とかを漆でくっつけるやつですよね? 直すだけでなく、継ぎ自体が器の味にもなる。

そうですそうです。子どもが生まれたら習いに行けなくなるので、家で自分でできるようになりたいなって思ってます。面白いんですよ。何でも継げるんです。ガラスなんかもできますから。

——ガラスですか!

ガラスは難しいんです。金継ぎは漆で接着して金なんかで継ぎ目を装飾するんですけど、ガラスの場合は透けるから、下地の漆の色が見えちゃう。だからちょっと特殊なんです。

——そういう手しごとが好きなんですね。

好きですね。陶器も好きで、骨董市なんかを見に行ったりもします。

——じゃあ、今度は金継ぎの方で萌木の村に関わるようになっても面白いですね。

そうですね(笑)。

——楽しそうですね! でも、10年前は自分が山梨で金継ぎやってるなんて思いもしなかったんじゃないですか?

思ってなかったです(笑)。何か「こう!」って思ったら本当にやりたくなっちゃうんです。

——山登りで「今までやってなかったことも意外とできるんだ」って実感したのも大きかったんじゃないですか?

そうかも。今、何でもできるんだって思います。

——無事生まれて、お店に遊びに来るのを楽しみにしてますね!

はい。みんなにも子どもを見てもらいたいですから!

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