仕事をやってるからには楽しいと思わないと損でしょう?
——フロアスタッフ・伊藤魁インタビュー

ベテランから若手までいろんなスタッフが働くROCK。そのなかでもとりわけ若いスタッフのひとりが伊藤魁です。

去年短大を卒業してROCKに入ってきた21歳。ホールで働く彼の姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

今回はそんな若手スタッフから見たROCKについて話してもらいました。

「山梨をもっと知ってもらいたい」を実現する場所

——去年新卒で萌木の村に入ったということで、ちょうどそろそろ1年ということですね。ROCKで働くきっかけは何だったんですか?

僕は山梨県の韮崎市の出身で、短大も県内だったんです。ROCKとの出会いは、遡ると記憶も曖昧なころに母がフィールドバレエのチケットを取ってきたりというのがあるんですが、本格的に知ったのは大学のころでした。

——観光系の勉強をしていたんですか?

伊藤魁。

いえ、大学では全然違う勉強をしていたんですけど、選択の授業で山梨の観光業について学ぶ内容のものがあったんです。そこで実際に観光関係の事業をやっているところに行ってみようという機会があって、それで萌木の村に来たんです。見て回ったり、ROCKで食事をしたりして。

——そこで興味を持ったんですね。

はい。もともと山梨をいろんな人に知ってもらいたいって気持ちがあったんです。山梨って、名前は知っているけどどこにあるかわからないという人も多いじゃないですか。僕らからしたら「富士山だってあるじゃん」って思うんですけど、富士山っていうと静岡をイメージする人も多いんですよね。どんなところかしっかり知っている人って少ないと思うんです。だから、いろんな人が来て、山梨の魅力を伝えられるようなところに携われたらいいなと思っていたんです。

——地元が好きというのは昔からなんですか?

そうですね。東京に出たいって人も周りにはいましたけど、僕は都会ってちょっと苦手で。だから「えー、東京行くの!?」って思ってました(笑)。ここでの生活を楽しみすぎちゃってるというか、昔からどこか遠くに遊びに行くより、地元で遊んでて、気付くと知らない子とも仲良くなってる、みたいな感じが好きだったんです。そういうのって地域というのがしっかりあって、あったかいコミュニティがないとできないじゃないですか。そういう部分でも、ここに生まれて良かったなと思っています。

——そうすると、就職も山梨が希望だったわけですね。

はい。当時は特に「この仕事をやりたい!」というものはなかったんですが。そんなときに、学校の先生に「じゃあ萌木の村に行ってみたら?」って勧められたんです。「面白いところだよ」って。接客業はバイトとかを通じて親しみもあったし、ここは全国各地からいろんな人が来る場所でもあるじゃないですか。だから、ここで働いてみようと。

——今職場はROCKですが、萌木の村の中でもROCKが第一希望だったんですか?

実は最初は違ったんです。観光客の方が多いところといったらホテルなのかなって思っていたから、ホテルを希望していたんです。ただ、そのときすでにホテル志望で入ってくる人が決まっていたので、「じゃあROCKに」ということになりました。でも、実際に働いてみてから気付いたんですが、ROCKってすごくたくさんの観光客の方々がいらっしゃるんです。何ならホテルよりも多いし、思っていた以上に近い距離感でいろんなお話をさせてもらえる。結果的にROCKの方が自分の希望に合っていました。逆にありがとうございます、という感じです(笑)。

その場その場でベストな答えが変わる

——そんな形で入社してそろそろ1年ですが、1年働いてみての感想はいかがですか?

最初はとにかく大変でした。3月の終わりくらいから働き始めたので、最初の内はそれほど混まない時期だったんですけど、そこにゴールデンウィーク(GW)が来て。

——ああ、一気に混み合う時期ですね。

そうなんです。まだ仕事を覚え始めたってころにものすごい混雑を経験して、もう怒濤のラッシュをくらったみたいな気持ちでした。「みんなこんなのをこなしてるの!?」って(笑)。とにかくそのときは仕事をこなすので精一杯で、なかなかお客さん一人ひとりをちゃんと見ることも難しくて……。もう毎日グッタリしてました。でも、連休初日からそういう混雑を経験したから、自分のなかのリミッターが解除された感じというか(笑)。大変なんだけど、それもまた楽しいという感じになれました。あれがあったから、そのあとの夏の混雑も含めて、1年やってこれたのかな、と思います。

——お店の印象も変わったんじゃないですか?

というか、最初は飲食店がこんなにいろんな人とつながっているんだというのがわかっていませんでした。常連さんが多いといっても、「どうもー!」なんて挨拶するくらいだと思っていたんですけど、ROCKだと「今度こんなイベントやるんで」なんて話もしてくれる。すごく距離が近くて、フレンドリーに話をしてくださる方が多いんです。遠くから来てくださる、年に何回かってペースのお客さんもいますけど、そういう方も「また来たよ!」って話しかけてくださる。お客さんもそういう関係を含めてお店に来てくれているんですよね。それがすごいなと思いました。

——大きなお店でスタッフもたくさんいるけど、個人店みたいな関係がありますよね。

そうなんです。スタッフの方もみんなよく来てくれる方とか、常連さんというのを知っていて、覚えている。そういう距離感が独特だなと思います。それと、スタッフ同士の関係もすごくいいんです。

——仲がいいですよね。

はい。休みの日に遊びに行ったりって人もいるくらいで、仕事仲間であり、仕事のあとは普通の人間同士というのが普通にある。気のあう人同士で遊んだりしているので。同時に、仕事中の連携もすごくいいんです。たとえば、すごく忙しいときもキッチンとホールが仲良く回っている。

——それってけっこう珍しいですよね。忙しいときってどうしても殺伐としがちというか。

「あれはまだ!?」とか(笑)。でも、ROCKの場合そうならなくて、料理を運ぶ人が足りなければ「こっちに呼んで運んでもらおう」とか、「キッチンでタイミングを見て出すようにしよう」とか、お互いにいろいろ考えてあげているんです。たぶんホールの人はキッチンの状況を、キッチンの人はホールの状況をちゃんと見ているから、そうやって何もいわずに連携ができるんだと思います。

——ROCKはそういう阿吽の呼吸みたいな部分がすごく大きいですよね。

そうなんです。ホールの仕事にしても、基本的なやり方やルールはあるんですけど、いつもそのとおりにやりさえすればいいというわけじゃない。たとえば、普段ならこの作業からやるべきだけど、お客さんが多いときは別のことを先にやった方がよかったりとか、状況によってベストな対応が変わってくる。いわゆる答えはなくて、その場その場で一番いい選択をしないといけない。

——それって店内の状況をきちんと把握しないとできないですよね。

そうです。自分だけじゃなくてお客さんの動きだったり、ほかのスタッフの動きも見ながら考えないといけないんです。料理を運んでいる人が多いから、自分はテーブルを片付けよう、とか。そういうのって経験を積み重ねないとわからないので、その辺は大変だなと思っています。

「大事な日」「特別な日」の舞台になれる嬉しさ

——1年働いてみて特に印象的だったことはありますか?

団体の方の貸し切りなんかがあると、普段とはまた違ってくるので、それはいい経験だなと思いました。大皿での料理の提供になったりするじゃないですか。だから、料理が減ってきたら「そろそろ次の料理をください」とか、お皿も積極的に交換したり、グラスが空いていたら「お注ぎしましょうか」とか。注意するポイントや連携の仕方が通常の営業とは違うんですよね。それと、イベントも印象的でした。

ちなみにこの日はデザートビュッフェを開催していました。

——ROCKはイベントも多いですもんね。

はい。僕は去年ROCKの日(6月9日に行われたイベント)に出られなかったのでそれがすごく残念なんですが、印象に残ったものはいろいろあります。特に大きかったのは年末のカウントダウンパーティーですね。

——大晦日に行われた年越しイベントですね。

そうです。大晦日、年越しってすごく特別な日じゃないですか。家族で家にいて過ごすという人も多い。そういう特別な日に、これだけたくさんの人がROCKを選んで来てくれるんだっていうのはすごいことだなって。近くに神社があったりするわけでもないから、ついでに来てくださるって立地じゃないんですよ。しかも去年は年明けの1月1日が結婚記念日だって方もいらしてくれて。「そんな大事な日に!」ってすごく印象に残りました。

——レストランって日常の一部でもあり、そういう特別な日の舞台になれる場所でもありますよね。

そう思います。ROCKだとバースデーのサプライズをやりたいって相談してくださる方もけっこういて。スタッフはもちろん、居合わせたお客さんもいっしょに盛り上がってくれる。そういう空気感がありがたいなと思います。スタッフとして関わっていても楽しいですね。すごく緊張もしますけど(笑)。

——スタッフとして特別な日に関わるのって緊張しますよね。

はい。「間違っちゃいけない!」ってドキドキしながら音楽を流したりしてます。1年の思い出になる瞬間ですから。

——そういうのもROCKの場合、いろいろ相談しながらやりますもんね。

「ちょっとお願い」くらいの相談でも「やるやる!」って感じで対応してますね(笑)。音楽とかも音源さえあればすぐかけられますし。そういう様子を見て「こういうの相談できるなら今度お願いしたい」っていってくださるお客さんも出てくるのがまた嬉しいです。

スタッフ自身が「お客さんの目的」になれる店

——タイプとしてもそういうことを楽しめるタイプなんでしょうね。そこがROCKに合っているのかも。

仕事をやってるからには楽しいと思わないと損だと思うんですよね。忙しい、キツいって思ってても、どこかで楽しいと思ってるから1年やってこれたんだと思いますし。

——そういう楽しさって、お店の雰囲気の影響も大きいんじゃないでしょうか。

確かにそうだと思います。怒りとかイライラみたいなものって伝染しちゃいますからね。忙しくてもどこか楽しげにやっているから、自然に笑顔にもつながる。やっぱり怒ってると、いざお客さんに対面したときなんかもパッと笑顔が出にくいですから。自然に何となく笑顔がある方が料理を頼んだり、ちょっとした質問もしやすいですよね。そういう雰囲気がROCKの魅力だと思うし、僕自身もお話ができるのがすごく嬉しいんです。話をすると元気になるじゃないですか。だから、忙しいときでもお客さんに声をかけられて話ができるとすごく嬉しいし、元気が出ます。

——普段はどういう感じでお話しているんですか?

僕の場合はお客さんから声をかけてもらうのがきっかけという場合が多いです。お冷やをお出ししたら「この水おいしいね!」とか、「ここってやっぱりカレーが一番有名なの?」とか、「お兄さんのオススメは?」みたいなところから会話が始まったりします。自分から声をかけていった方がいいのかもしれないですけど、人って「今は話しかけられたくない」ってタイミングもあると思うんです。そういうときに声をかけてしまったりしたくないので、なかなか話しかけられない。

——声をかけないのがサービスというときもありますもんね。

その見極めが難しいですよね。人によっても違いますし。自分からもうまく話しかけられるようになるといいんですけど。そういう会話からお店を楽しんでもらって、次からは自分目当てできていただけるようになったらすごく嬉しいなって思っています。飲食店ってもちろん料理も重要な要素なんですけど、さっきも話したように、ROCKの場合人との交流や会話を求めて来てくださるお客さんも多い。そういう「お客さんの目的」になるスタッフがもっと増えたら、お店にとっていいことだと思うんです。自分のコミュニケーション能力をもっと伸ばしていきたいですね。

UVERworldを通じてつながった嬉しさ

——ROCK2年目に入りますが、これからやりたいこととかってありますか?

まずはとにかくお店をちゃんと回していけるようにっていうのがあります。今年はフロアチーフの武藤さんも抜けてしまうので、代わりというのではないですけど、その穴をどれだけ埋められるか、自分の色を出してお店をうまく回すかというのは考えないといけない。とにかくお客さんには、ここに来たからには笑顔で帰っていただきたいので。イベントなんかでも、何となくこんなことができたらいいのかなと思っていることはあります。

——どんなことですか?

実際にできるかというのはまだまだですけど、ROCKってアーティストさんを招いてのイベントもあるし、お客さんも音楽が好きな人がけっこういると思うんです。だから、アーティストさんの結成日とか記念の日に、映像を流してファン同志の交流の場とかを持てたら面白いかなと思っています。

——やっぱり自分自身も音楽好きなんですか?

聴く専門ですけど、好きです。邦楽中心ですが。最近だとMrs. GREEN APPLEとかONE OK ROCKとかいろいろ聴きますが、なんといってもずっと好きなのはUVERworldです。中3くらいのときに初めてライブに行ったんですけどあの人たちかっこよすぎて……! 音楽って声をかけたり、話をするきっかけにもなってくれるんです。たとえば、バンドTシャツとか着ていたり、好きなアーティストってけっこうファン同士は見つけられたりする。僕も昔京都旅行に行ったとき、UVERworldのTシャツを着ていたら旅館の仲居さんに「UVERお好きなんですか?」って声をかけられたことがあって。それがすごく嬉しかったんです。自分の好きなものに共感してくれるって嬉しいんだなって。だから、自分もお客さんでそういう人が来たら絶対話しかけようって思ったんです。実際、ここで初めてお客さんに自分から声をかけたのもUVERのTシャツを着ているお客さんでした。その勇気をくれたのが京都旅行のときの体験なんです。

——好きなものって仲良くなるきっかけになりますよね。

そうなんです。そういう人がいるお店って、また行きたいと思えるじゃないですか。料理というよりその人に会いに行こうって。お客さん同士でも集まるきっかけみたいなイベントがあったらすごく盛り上がると思うんです。

ホールで見かけたら、ぜひUVERworldの話をしてあげてください!

——そういうイベントがきっかけでアーティストさん本人ともつながるかもしれませんしね。

そうなったら最高ですよね。店内はもちろん、フィールドバレエの時期なんかは野外のステージもある。そういう場所を使ってライブやいろんなこともできる環境はあるので。自分の企画したイベントからそういうことにつながったらというのが理想ですね。

——伊藤さん発のイベントも楽しみですね! 2年目以降も期待しています!

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